世界の宗教博物館を作りたいと望んだエミール・ギメのコレクションを元に誕生したこの美術館は、彫刻、絵画、装飾品など現在約4万5,000点もの収蔵作品を誇っています。今月はヨーロッパの中でも、コレクションが網羅しているエリア、文化、歴史ともに、最もバラエティにあふれた東洋美術の館をご紹介します。
仏教はインドの北東部、ネパールを経てさらに北上しチベットへと伝わります。いずれの国も敬虔な仏教徒を多く抱えています。僧が描いた精密な曼荼羅、黄金で覆われた仏像などに目が奪われます。
仏教はインドから伝来する途中、土着信仰や習慣などと結びつき、それぞれの特徴を備えるようになりました。チベットは特に神秘主義的な密教が盛んな国です。
また仏教は西へも広がっていきました。インドの西にあるパキスタン、アフガニスタンは現在イスラム教国家となっていますが1世紀から3世紀にかけては優雅なガンダーラ美術が花開いた地です。
▲《曼荼羅》15世紀・チベット
▲≪菩薩≫ 1〜3世紀頃・パキスタン(ガンダーラ美術)
面白いのはギリシア美術などの西洋の影響が仏像などに現れていることです。西洋と東洋の邂逅をここに見ることができます。特にアフガニスタンは前体制の狭量なイスラム主義者が仏教美術品や遺跡を破壊したこともあって、ガンダーラ文化の美術品はますます貴重なものとなっています。
ギメ美術館の代表的なコレクションのひとつが先史時代から始まる中国の美術品です。紀元前2300年の土器をはじめとして、紀元前の青銅細工や漆の木彫作品を見ると、造形美と技術の素晴らしさに中国の高度な文明が伺えます。中国のセクションは「先史時代から唐時代まで」、「仏教芸術、宋から明時代まで」、「清時代」と分類して展示されています。
▲中国清時代の屏風が展示されている塔の最上階。
▲中国工芸の展示室内観。手前は唐三彩。
彫刻、絵画、版画、書などの美術品の他に、1万点にも及ぶ陶磁器、螺鈿家具や漆工芸品など巧緻な装飾品はひとつひとつ鑑賞するに値するものです。美術館にある塔の最上階には漆の間があり、仰ぐように大きな12扇の屏風が2隻、螺鈿漆細工が細かく施された机が2つ展示されていますので、忘れずに訪れてください。
田中久美子(Kumiko TANAKA/文)/Andreas Licht(写真)
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所在地
6, place d'Iéna 75016 Paris
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Tel
+33(0)1 56 52 53 00
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開館時間
10:00-18:00
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休館日
火曜日
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入館料
常設展 一般:6.5ユーロ
割引:4.5ユーロ
(但し、第1日曜日は入館無料、他の日曜日は割引料金)
特別展 一般:7ユーロ
割引:5ユーロ
(但し、毎日曜日は割引料金)
特別展と常設展を含めた見学
一般:8.5ユーロ
割引:6ユーロ
※18歳未満、身障者、ジャーナリストは無料
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アクセス
地下鉄イエナ(léna)駅、トロカデロ( Trocadéro)駅、ボワシエール(Boissière)駅下車。
MMFブティック
では、ギメ東洋美術館の作品からモチーフを得た個性的なアクセサリーをお楽しみいただけます。
MMFインフォメーション・センター
では、公式ガイドブックから過去に開催された展覧会カタログなど、ギメ東洋美術館に関する書籍を閲覧いただけます。
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