
モンマルトルを散策する際にぜひ訪れたい場所のひとつが、モンマルトルの歴史と文化の軌跡を充実したコレクションとともに紹介する、このモンマルトル博物館です。昨年の秋から年末にかけ、博物館はパリ市からの補助金停止の問題で閉館の危機にさらされていましたが、2010年無事存続が決定し、今年で開館50周年を迎えることとなりました。
モンマルトル博物館は観光客で賑わうテルトル広場やサクレ・クール寺院のすぐ裏手に位置したコルト通り沿いにあります。モンマルトルのぶどう畑に張り出すようにして建つ博物館の建物は、17世紀にモリエール一座の役者であったローズ・ド・ロシモン(Rose de Rosimond)が別荘として所有していたもので、モンマルトルの丘では最古の建物です。
博物館が開館する以前、この邸宅には19世紀から20世紀にかけて、多くのアーティストが移り住んだ歴史があります。ルノワールはそのうちの最も有名な画家のひとりで、1876年にこの場所にアトリエを構えた彼は、《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》《ぶらんこ》《コンセルヴァトワールの出口》などの著名な作品を、敷地内の中庭やコルト通りに面したアトリエで描きました。1896年になると、ルノワールの《都会のダンス》のモデルにもなった女流画家、シュザンヌ・ヴァラドンが恋人の画家アンドレ・ユテール (André Utter)と、息子で後に画家となるモーリス・ユトリロとともに同地へと移り住みます。ユトリロはモンマルトルの風景画を頻繁に描いたことで有名ですが、モンマルトルを散策すると、彼の描いた風景の多くが現在も当時の趣を失わずに在ることに気づかされるでしょう。

© Yoko Masuda
博物館は1960年、モンマルトルの歴史保存協会「ル・ヴュー・モンマルトル」(Le Vieux Montmartre)の会長ポール・ヤキ(Paul Yaki)と建築家のクロード・シャルパンティエ(Claude Charpentier)によって創立されました。「ル・ヴュー・モンマルトル」は「古きモンマルトル」を意味し、今から1世紀以上も前の1886年にモンマルトル周辺地区の歴史や芸術などの文化遺産の保存、研究を目的に創設されました。この協会の発足を機に、モンマルトルにまつわる芸術作品や、古文書を含む資料の収集が行われ、現在博物館ではそうしたコレクションが常設展や企画展を通して紹介されています。
展示内容は<大修道院や雑木林、採石場、風車のあったかつてのモンマルトルの風景>、<「パリ・コミューン」とサクレ・クール寺院の建設の歴史>、<ムーラン・ルージュに代表されるキャバレーの全盛>、そして<ボヘミアンの芸術家たちについて>と、大きく分けて4つのカテゴリーでモンマルトルの歴史をくまなく扱っています。
なかでもモンマルトルの娯楽文化に関するコレクションはたいへん充実しており、博物館にはムーラン・ルージュ、レ・ディヴァン・ジャポネ、シャ・ノワール、ミルリトン (Mirliton)、エリゼ・モンマルトルなど、モンマルトルの有名なキャバレーのために制作された色とりどりのポスターが一堂に集められています。衣装に身を包んで踊るダンサーや、観客で賑わう当時の様子が描かれたそれらの作品からは、在りし日のモンマルトルの喧騒と熱気が伝わってくるようです。
- 所在地
12 rue Cortot 75018 Paris - Tel
+33(0)1 49 25 89 39 - URL
http://www.museedemontmartre.fr/ - 開館時間
11:00-18 :00
7〜8月の金・土・日曜日は19 :00まで開館 - 休館日
月曜日、1月1日、12月25日 - 入館料
一般:8ユーロ
割引:5ユーロ
学生(12-26歳):4ユーロ
12歳未満は無料 - アクセス
メトロのアンヴェール駅(Anvers)もしくはラマルク=コランクール駅( Lamarck-Caulaincourt)下車
- MMFインフォメーション・センターでは、モンマルトル博物館のカタログやパンフレットなどを閲覧いただけます。

増田葉子(Yoko Masuda):明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
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