

メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(MMF)のある銀座界隈には 企業が運営する美術館やギャラリーなどが、数多く点在しています。銀座のMMFにお越しの際、併せて訪問いただきたいこうしたアートスポットをご紹介してまいります。
個性的なビルが立ち並ぶ銀座界隈──。中でも、中央通り沿いに聳える「ポーラ銀座ビル」は、銀座一丁目のランドマーク的存在です。今回は、このビルの3階にある「ポーラ ミュージアム アネックス(POLA MUSEUM ANNEX)で9月11日まで開催中の「香りをイメージする香水瓶展」を訪れました。

- 所在地
東京都中央区銀座1-7-7
ポーラ銀座ビル3階
- Tel
03-3563-5501
- 観覧料
無料
- 「香りをイメージする香水瓶展」
開催中〜2011年9月11日(日)まで
11:00-20:00(入場は19:30まで)

- アクセス
東京メトロ有楽町線「銀座一丁目駅」7番出口すぐ。東京メトロ銀座線・丸の内線・日比谷線「銀座駅」A9出口から徒歩6分。JR「有楽町駅」京橋口改札口から徒歩5分。
「香水をつけない女に未来はない」そんな言葉が語り継がれているように、フランスは香水の国です。今回、ポーラミュージアム アネックスで開催されているのは、フランスを中心とする香水、それもその「瓶の形」にテーマを絞った展覧会です。
エレベーターを降りると、どこからともなく漂う爽やかな香り。アロマセラピスト大橋マキさんが独自にブレンドしたオリジナルアロマ「Kohaku」を使用して涼しさの演出をしているとのこと。その清涼感に、思わず外の暑さを忘れてほっと一息をつき会場へ入ります。
ポーラさんといえば、印象派を中心とする充実した西洋美術コレクションを有する箱根の「ポーラ美術館」で知られていますが、じつは、化粧品の製造販売という事業にゆかりのある、化粧道具のコレクションも充実しています。その数およそ6,400点。今回は、その中から、選りすぐりの香水瓶が集められています。
会場にずらりと並ぶ香水瓶は、どれも繊細で美しく、女心をくすぐられるものばかり。「植物」や「動物」、「幾何学」といった身近なカテゴリーに分類しておよそ100点の香水瓶が紹介されています。ルネ・ラリックやエミール・ガレによるまさに「芸術品」という趣の品々から、車やランプ、テニスラケットの形をしたユニークな瓶まで──。その多彩なフォルムを見ていると、そこにどんな香りの香水が入っていたのか、楽しい想像がふくらみます。
多彩な形の展示作品を順にたどっていくと、20世紀初頭の香水の歴史がよく分かります。1910年代の作品には、「ドルセー」や「ロジェ・エ・ガレ」といった香水専門メーカーのものが多いのですが、1920年代以降になると、「ウォルト」や「スキャパレッリ」をはじめとするデザイナーズ・ブランドの香水瓶が増えてきます。この頃、「NO.5」を発売したシャネルを皮切りに、デザイナーズ・ブランドが次々と香水市場に参入していったのです。
さらに、香水が一般的になるにつれて、ユニークなのは瓶の形だけではなくなったこともうかがえます。香水にとって、「瓶」と同じく重要な要素とは──「ネーミング」です。「アンプリュダンス(軽はずみ/軽卒)」「ルケット(いちずな願い)」「サン・アデュー(また会いましょう)」「ダン・ラ・ニュイ(夜中に)」──。イマジネーションを刺激する詩的で多彩な言葉が、香水の商品名として採用されるようになったのです。
今回の展覧会に来てみて、時がたてば消えてしまう「香り」という目に見えないものを販売するには、付加価値のある「ボトル・デザイン」や「ネーミング」によるイメージ戦略がとても重要であることがよく分かりました。
当時流行したものと同じタイプの香りを体験できる展示室で、瓶のデザインという視点から香水の魅力を探る「香りをイメージする香水瓶展」。涼やかな〈ガラス〉と〈香り〉が共演する、夏にぴったりの展覧会です。
“面白い形”をテーマに、ポーラ・コレクションから選りすぐりの香水瓶を集めました。いずれ劣らぬユニークなラインナップですが、その中から、皆さまに“お気に入りの一品”を見つけていただければうれしく思います。当館は入場も無料ですので、今回の展覧会に限らず、日常的にアートを楽しむ場としてお気軽にお立ち寄りください。
ポーラ ミュージアム アネックス 広報担当 菊池麻衣子