今回の東京展の大きな見どころのひとつが、三菱一号館美術館の新規収蔵作品である《グラン・ブーケ(大きな花束)》です。この作品は、ブルゴーニュ地方にあるロベール・ド・ドムシー(Robert de Domecy /1862-1946)男爵の城館の食堂を飾っていた16点の壁画の内の1点で、およそ3年の制作期間を経て、1901年に完成しました。当時ルドンは61歳。ドムシー城の装飾壁画は、ルドンの晩年の傑作として知られています。
しかしこの《グラン・ブーケ》は、多くの人の目に触れることなく、110年間、城に眠り続けていました。ほかの15点は、1988年、相続税の美術品による物納制度によって、フランスの国家収蔵品となり、以降、オルセー美術館のコレクションになりますが、装飾画の中心的な存在であった《グラン・ブーケ》だけは、男爵家の食堂に残されたままでした。そして2010年、三菱一号館美術館がこの作品を購入。翌年3月にパリのグラン・パレで初めて一般に公開された後、海を渡り、今回ついに、日本初お披露目となりました。
その“幻の花束”は、展覧会も終盤に差し掛かった頃、わたしたちの眼前に現れました。薄暗い照明の中に浮かび上がる巨大な花のパステル画。縦248.3cm、横162.9cmという見上げるばかりの大きさと輝く色彩に圧倒され、誰もがひととき、言葉を忘れたかのように作品の前に立ちすくみます。
パステル画は、その鮮やかな発色が魅力ですが、反面、顔料が剥がれ落ちやすく、油彩よりも脆弱という弱点があります。それでもこの作品の幻想的な花姿の魅力を引き出すため、照明は50ルクス以下に抑えられ、ドムシー城の食堂に飾ってあった当時の状況に可能な限り近づけているそうです。
また、ここまで大きなものは、晩年、多くのパステル画を描いたルドン作品の中でも最大級、さらに絵画史上でもほとんど類を見ないものです。
「暗闇の中から現れる光のような《グラン・ブーケ》は、黒の世界から色彩の世界へと変貌を遂げたルドンの世界観を表す一枚であると同時に、“再生のイメージ”として、今を生きるわたしたちに希望を届けてくれるような作品です」と語るのは、三菱一号館美術館館長の高橋明也氏。19世紀の面影を随所に残す三菱一号館美術館を新たな“城”として、光溢れる年の始まりを、祝福してくれているようです。
*《グラン・ブーケ》は作品保存の為、展示期間に制限を加えています。「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」展の会期終了後の公開は、2012年9月からを予定しています。
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- 会期
2012年1月17日(火)〜3月4日(日) - 会場
三菱一号館美術館(東京・丸の内) - 所在地
東京都千代田区丸の内2-6-2 - Tel
03-5777-8600(ハローダイヤル) - URL
http://mimt.jp/ - 展覧会
http://mimt.jp/redon2012/ - 開館時間
水曜・木曜・金曜:10:00-20:00
火曜・土曜・日曜・祝日:10:00-18:00
*入場は閉館の30分前まで - 休館日
月曜日
*ただし2月27日(月)は開館 - 観覧料
一般:1,400円
高校・大学生:1,000円
小・中学生:500円
*開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は、公式サイト、ハローダイヤルでご確認ください。
- 2012年2月1日以降銀座MMFにご来館いただいた方の中先着10名様に「ルドンとその周辺―夢見る世紀末」展の無料観覧券を1枚プレゼントします。「MMFウェブサイトを見た」とおっしゃってください。
- 三菱一号館美術館の高橋明也館長監修、岐阜県美術館の学芸部長山本敦子氏執筆の『もっと知りたいルドン』(東京美術刊)では、ルドンの生涯とともに、その代表作を時系列でたどります。ルドン好きの方にも、そして今回の展覧会で初めてルドンに興味を持った方にも最適な1冊です。
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。