2010年に100万人以上を動員し大きな成功を収めたノルマンディ印象派フェスティバルが、今年待望の第2回目を迎えました。4月27日(土)から9月29日(日)の会期中、展覧会をはじめとしたさまざまな催しがノルマンディ地方各地で開催されます。MMMの特集ではル・アーヴル、カン、ルーアンの3都市で行われる本フェスティバルのハイライトとなる企画展にスポットを当て、3回の連載記事をお送りします。
MMMのシリーズ第1弾では、ル・アーヴルのアンドレ・マルロー美術館で行われているピサロ展をクローズアップします。
モネ(Claude Monet/1840-1926)、ピサロ(Camille Pissarro/1830-1903)、シスレー(Alfred Sisley/1839-1899)、ルノワール(Auguste Renoir/1841-1919)など、フランス北部のノルマンディの自然に魅了された印象派の画家は数知れません。とりわけ彼らに愛されたのが、緑豊かなセーヌ河流域や、英仏海峡に面した600kmにわたる海岸一帯などの水辺の風景でした。第2回ノルマンディ印象派フェスティバルではこの「水」がテーマ。川の流れ、波立つ海、静かな湖面と、印象派に強いインスピレーションを与え続けた「水」の作品にオマージュを捧げます。
会期中ノルマンディ各地で開催される印象派のイベントは600以上に上ります。中でもRMN(フランス国立美術館連合)のパートナーシップのもと、ル・アーヴル、カン、ルーアンの3都市で開催される3つの特別展は、本フェスティバルの核ともなる重要な見どころです。
ルーアン美術館では「まばゆい反射―印象派の傑作100点」(4月29日〜9月30日)、カン美術館では「水辺の夏―レジャーと印象派」(4月27日〜9月29日)、そしてル・アーヴルのアンドレ・マルロー美術館では「港におけるピサロ〜ルーアン、ディエップ、ル・アーヴルにて」(4月27日〜9月29日)と題された企画展がそれぞれ開催中です。
ピサロは1874年から8回にわたり行われた印象派のグループ展にすべて参加した、唯一の印象派の画家です。キャリアの初期は主にパリ郊外で屋外制作を行い、仲間と新しい表現を追究しながらのどかな自然の風景を描きました。キャリアの中盤に入ると新たな題材を取り入れ、パリをはじめとした都市生活の様子を好んで描くようになります。とくにノルマンディ地方のルーアン、ディエップ、ル・アーヴルに滞在した折には、港の風景に魅せられ、連作を描くことに没頭しました。蒸気船の煙や新しく建設された鉄橋など、産業の発展に伴い変容する港の様子は、ピサロにとって刺激に満ちた新しいモチーフとなったのです。
今回のピサロ展は、これら3つのノルマンディの都市で描かれた港の連作がテーマとなります。約30点の油彩作品のほかに、版画、素描、当時の港の情景を写した写真なども展示され、多彩な視点からピサロの作品を紐解くことができます。
次ページでは、ピサロ展の出品作の中からルーアン、
ディエップの地をモチーフに描いた作品をご紹介します。>>
Update:2013.7.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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