2013年にマルセイユ・プロヴァンスのヨーロッパ文化首都の一環として、南仏のオーバーニュでこのピカソの企画展が行われました。展覧会はヴァロリスのマドゥーラ工房で1946年から60年代末にかけて制作された約150点のピカソの陶器のオリジナル作品で構成されました。展示作品の4分の3はピカソの家族からの貸し出しによる貴重なプライベート・コレクションで、初公開のものが多くを占めています。
セーヴルのピカソ展ではオーバーニュで公開された貴重なオリジナル作品の展示に加え、ピカソの陶器のエディション版の母型も展示されています。エディション版の母型は、マドゥーラ工房が閉鎖された2008年にセーヴル国立陶磁器美術館に一時的に寄託されたもので、本展で初公開となります。これらの母型はピカソがどのように陶器作品に取り組んだかを物語るたいへん貴重な資料です。展示方法は収蔵庫を思わせる雰囲気で、作品の見やすさに固執せずに、セーヴルに寄託されたすべてのピカソの母型を展示することに配慮しました。
さらに本展覧会では、ピカソの陶器制作のインスピレーションの源となった古代や中世の陶器作品を別室で紹介しています。キプロス、ギリシア、イスパノ・モレスク(スペインの陶器)など、これらの陶器はピカソのデザイン、装飾に大きな影響を与えました。例えば赤と黒の色彩、人物や動物のモティーフには古代ギリシアの影響、タナグラと呼ばれる女性像には古代キプロスやエトルリアからの影響がうかがえます。またイスパノ・モレスク独特の中央部が盛り上がった両面装飾の大皿も、ピカソの作品に直接的に影響を与えているのは明らかです。ピカソは古代、中世のフォルムや色、テーマを見ならいながら、同時に当時のモデルニテを融合させ、独特の陶器のスタイルを作り出したのです。
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Update : 2014.2.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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