Dossier special - 海外の特集

  • 1.陶芸の世界に没頭した天才画家ピカソ
  • 2.学芸員による展覧会の見どころ
  • 3.学芸員によるオリジナル陶器作品の見どころ

セーヴル国立陶磁器美術館「陶芸家ピカソと地中海」展 Sevres - Cite de la ceramique≪ Picasso Ceramiste et la Mediterrane ≫

学芸員によるピカソ展ガイド2 オリジナル陶器作品の見どころ

ポエロン鍋

女性の顔(表)と男性の顔(裏)が描かれた栗用のポエロン鍋
1950年 個人蔵
©succession Picasso 2013 / crédit photo : maurice aeschimann

ヴァロリスは料理用の陶器の産地としてもたいへん有名です。ピカソはヴァロリス名産の陶器の水差しや瓶、皿などを利用して、作品を多く残しています。この作品は穴の開いた栗用のポエロン鍋を利用したものです。表と裏にそれぞれ女性と男性の顔が描かれており、この鍋を垂直に持つと、まるで古代の演劇のマスクのようです。実用的で平凡な日用品をアートへと変容させた、ユニークな例のひとつです。

闘牛

闘牛―槍のシーンが描かれた楕円皿 1951年 個人蔵
©succession Picasso 2013 / crédit photo : Gérard Friedli

闘牛はピカソにとって重要なテーマでした。闘牛はピカソの出身地であるスペインの伝統であることから、ピカソの故郷へのノスタルジーが感じられます。陶器だけでなく、絵画や版画作品にもこのテーマは頻繁に見られました。この楕円形の作品は、皿の形をうまく利用して闘牛のシーンが描かれているのが特徴です。皿の縁の部分には闘牛場の日向と日陰の観客席が描かれています。日陰で牛を仕留めるという闘牛の伝統的なテクニックが表現されていることに注目です。

タナグラ

瓶のフォルムを利用して作られた白いタナグラ人形 1948年 個人蔵
©succession Picasso 2013 / crédit photo : maurice aeschimann

タナグラとは古代のテラコッタ製の人形です。この作品はヴァロリスの工房で作られていた瓶のフォルムを利用しています。ろくろで成形作業中の職人の手を途中で止め、土が柔らかい状態で瓶を女性像にデフォルメし、女性の腰のラインやドレスの波打つ様子が巧みに表現されています。ピカソは陶器制作に没頭するにつれ、徐々に絵画と彫刻のテーマを融合していきました。実際、1930年代のピカソの絵画にはこのような流動的なラインを持った女性が頻繁に描かれています。

ファウヌス

左:ファウヌスの描かれた長皿 1947年 個人蔵
©succession Picasso 2013 / crédit photo : maurice aeschimann
右:ファウヌスの描かれた丸皿 1953年 個人蔵
©succession Picasso 2013 / crédit photo : maurice aeschimann

ローマ神話に出てくる牧神のファウヌスもピカソの陶器のモティーフとしてたいへん重要でした。半身半獣の神は、多産の象徴でもあり、ピカソにとっては官能的なテーマでもありました。描かれているファウヌスの顔は、子どもの顔、若い男の顔、また老人の顔とさまざまです。老人の顔は、ピカソの自画像であったといわれています。当時ピカソは60歳を過ぎていましたが、年の離れた若い妻と小さな子どもたちがいました。老いながらも異性を魅惑し続けるというピカソの人生の理想が垣間見られる作品です。

[FIN]

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Update : 2014.2.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

「陶芸家ピカソと地中海」展≪ Picasso Céramiste et la Méditerranée ≫

会期
2013年11月20日〜2014年5月19日
会場
セーヴル国立陶磁器美術館
所在地
2 place de la Manufacture 92310 Sèvres
Tel
+33 (0) 1 46 29 22 00
URL
http://www.sevresciteceramique.fr/
E-Mail
info@sevresciteceramique.fr
開館時間
月曜日・水曜日・木曜日:
10:00-17:00
金曜日・土曜日・日曜日:
10:00-19:00
休館日
火曜日、5月1日
観覧料
一般:8ユーロ
割引:6ユーロ
26歳以下:2ユーロ
6歳以下:無料
アクセス
地下鉄9番線Pont de Sèvres駅下車、徒歩約10分
トラム2番線Musée de Sèvres駅下車、徒歩1分
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