「日本のかたち」展は、2007年より毎年ミラノサローネで開催され、今年で8年目を迎えました。日本の伝統的なかたち、美意識、感性を、現代のインテリア空間で新しく機能するしつらいとして提案し、海外を中心に展開、普及を目指す、挑戦的な展覧会です。2007年開始当初はインテリアデザイナーを中心に行われていましたが、2014年は「庭と光」をテーマに、インテリアデザイナー、建築家、照明デザイナー、フラワーデザイナー、ランドスケープアーキテクトなど、インテリアの枠を超えたさまざまな作家が集い、作品を発表しました。 世界中で環境問題への注目が高まり、ミラノサローネでもエコロジーの枠組みが浸透するなか、「庭と光」は非常にクリティカルなテーマといえます。日本固有の伝統が息づき、海外での認知度も高い日本の「庭」。一方で「光」は日本特有の光環境のほか、2000年以降のLEDの台頭でデザインの環境が一変し、デザイナーがこぞって取り組む課題でもあります。この2つの要素をどのように解釈し、「日本のかたち」へと昇華するのか。今回の展示ではさまざまな領域で活動する作家によって、バラエティと示唆に富んだ「庭と光」の提案となりました。
建築家ユニットのアーキテクトタイタンは、照明《BUDS》を発表しました。「BUDS」とは「芽」という意味で、日本の伝統工法である「くさび(木栓)」を使用した家具シリーズの3作目。照明全体を木に見立て、照明を枝、くさびを芽とし、新芽が芽吹いていく姿をイメージした作品です。照明ユニットはくさびを抜けば簡単にとりはずすことができ、ひとつからでも成り立つフレキシブルな構成となっています。また充電式のLED照明を使用しているため配線がなく、持ち運んで好きな場所に設置できるのも魅力です。まさに木のようにすっと立ち上がるその姿は、自然を部屋のなかに持ち込み楽しむ床の間のような、日本の自然感をコンセプトに制作したとのこと。照明部分は鮮やかな色合いの和紙貼りで、下から上へ向かって地球の地表から宇宙までの景色の連続を表わしています。
フラワーデザイナーの澤田芳美さんが、「庭と光」のテーマで注目したのは、庭の植物。《GRASS CROW=GREEN 空間のしぐさ》というタイトルで、植物が成長する空間の、時間の流れを表現した作品です。植物を際立たせるアイテムとして使用したのは「いぶし銀瓦」。姫路城の瓦として使用されているものと同じ素材で、この繊細な色合いと光沢に感動した澤田さんが、伝統的な技術をモダンなスタイルにアレンジして多くの人に知ってもらおうと使用を決めたとのことです。作品全体のイメージは「春の水辺」で、照明によってネコヤナギのツタの陰影をいぶし銀瓦に映し出すことで、水面に美しい枝が映り込む情景を表現しています。またプリザーブドフラワーの花びらでつくった模様を、青色LEDで照らすことで思いもよらない美しい「絵画」がつくりだされていました。
次ページでは、「日本のかたち」展から、曽和治好さん、
玉井恵理子さん、デザインクラブの作品を紹介します。>>
Update : 2014.6.11
文・写真 : 塚本晃子(Akiko Tsukamoto) 建築家
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。