アラブ世界研究所の正面テラスで現在ひときわ存在感を放っているのが、本展の屋外展示です。展示されているのは機関車1両と、ブルーと黄色のラインのコントラストが特徴的な4両の客室車両。そのうち3車両はガイド付きで内部見学が可能です。ワゴン内では映像や音声とともにオリエント急行を題材にした映画の世界が再現され、あたかも映画のワンシーンに迷い込んだかのような臨場感を楽しめます。また展示車両のうちのひとつには、星付きシェフ、ヤニック・アレノ(Yannick Alleno)氏のプロデュースする期間限定のレストランがオープンしています(要予約)。
車両の見学を終えたあとに待っているのは、アラブ世界研究所地下で行われている800uに及ぶ室内展示です。ひとつ目のセクションでは旅行かばんをイメージした展示ケースにオリエント急行の歴史を物語る品々が集められています。国際寝台車会社のロゴの入った食器類や、客室車両内の美しい寄木細工の装飾、豪華な洗面台、またポスター、メニュー表など、見る者をオリエント急行の旅へと誘う内容です。さらに展示ケースを囲む大画面では、オリエント急行にまつわる映像資料や映画の名シーンを上映。このセクションではオリエント急行の文化的側面はもちろん、当時の鉄道の技術、社会背景にも焦点を当て、奥行きのある内容でオリエント急行の魅力をひもといています。
室内展示のふたつ目のセクションでは、オリエント急行の開通によって発展した、ヨーロッパと中近東の国々の文化交流の様子が紹介されています。当時のヨーロッパ人が見たオリエント世界を写真や資料で示しながら、オスマン帝国の崩壊といった近代アラブ世界の歴史を垣間見ることができる展示内容です。また旅のガイドブック、小説、絵画、映画など、ヨーロッパとオリエント世界の交わりのもとに生まれた作品からは、当時のヨーロッパの人々の旅へのあこがれとオリエント世界への強い好奇心を感じ取ることができます。それまでイラストや絵画でしか知り得なかった異文化を、実際に自分の目で見ることを可能にしたオリエント急行は、人々にとってこの上なく刺激的でロマンに満ちた夢の乗り物だったのです。
次ページでは、屋外展示の車両内部のレポートをお届けします。>>
Update : 2014.7.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。