1929年に製造されたこの車両は、朝、昼、晩の食事の際に使用され、また食事の時間以外にも、サロンとして利用されていました。ルネ・ラリックのガラスのレリーフのパネルが壁を贅沢に飾り、また各テーブルにはエレガントなブロンズ製のランプが備え付けられています。テーブルには国際寝台車会社(ワゴン・リ社)の「W」と「L」の入ったティーセットや灰皿などがセットされ、車両が使用されていた半世紀以上前の情景を再現しています。見学中の車内に流れているのは乗客の喧騒。異なる言語が飛び交っているのも、幾つもの国境を越えるインターナショナルな列車、オリエント急行ならではの演出です。
2両目のワゴンは1949年製の寝台車両で、1930年から1950年に製造された270台のY型の車両のうちのひとつ。3人部屋と2人部屋の11室のコンパートメントからなり、合計25人の宿泊が可能でした。光沢のあるマホガニーの板張りの部屋には各室ともに洗面台が備えられており、優雅さと機能性を併せ持っています。この車両では、映画『007』のスパイの部屋やアガサ・クリスティー原作の映画『オリエント急行殺人事件』のシーンを大胆に再現。事件現場のスリリングな光景が見学者を待っています。
トラン・ブルー(青い列車)と名付けられたこの車両は、その名の通り青色に覆われています。1929年にサロン車として製造され、食堂車やバー車として改造が重ねられました。バーに入ってまず目を引くのがラリックによるシルバーとガラスの豪華なはめ込み細工。また革張りのソファやマホガニー製のバーが備えられ、ホテルのロビーのようなくつろぎの空間が広がっています。バー車の半分を占める食堂は、寝台車と同様に映画『オリエント急行殺人事件』のシーンを演出。各テーブルに登場人物の映像が流され、手袋やバッグ、コートなどの持ち物が配されたワゴン内は、実際の映画の撮影現場のような空気に包まれています。
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Update : 2014.7.1
文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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