ルイ・ヴィトン財団美術館の設計を手掛けたのは、アメリカのロサンゼルスを拠点に活動する著名な建築家フランク・ゲーリー。常識にとらわれないアイディアで常に革新を追い求め、現代建築界をリードし続ける存在です。スペイン、ビルバオのグッゲンハイム美術館、ベルリンのDZ銀行ビル、ロサンゼルスのウォルト・ディズニー・コンサートホール、ニューヨークのIACビルなど、アメリカ、ヨーロッパにおける建築作品が代表作として挙げられ、それらの奇抜で大胆なフォルムの建築は世界で高い評価を得ています。
ゲーリーがLVMHグループのベルナール・アルノー氏に初めて出会い、設計の依頼を受けたのは2001年12月のことでした。その2ヶ月後には建設予定地を実際に訪れ、ゲーリーの手掛けるルイ・ヴィトン財団美術館の建設プロジェクトは本格的に動き始めました。ゲーリーはプルースト(Marcel Proust/1871-1922)の小説に登場するブローニュの森との出会いにたいへん感銘を受け、自らが手掛けるモダンな建築を、いかに周囲の自
然に馴染ませるかを設計の重要なコンセプトとして据えました。プロジェクトが進行し、さまざまなアイディアの建築模型が製作される中、ゲーリーが思い描いたのはガラス張りのライトな印象の建築。パリのグラン・パレのように19世紀フランス特有のガラスと鉄骨を駆使した建築を、19世紀のエスプリを残す庭園のイメージに重ね合わせたのです。
そして最終的に採用されたのが、空や周囲の緑を反射する透き通った外観を備えた設計プランでした。「変わり続ける世界のイメージに合わせ、時間や光に応じて変化する建築を造りたかった。束の間の印象と、絶えず繰り返し変化する印象を生み出すために。」ゲーリーは建物の設計にあたり、自身のヴィジョンをこう語っています。
建築の内部の構造は、「アイスバーグ」と名づけられたブロック状の塊が使われています。そこへ12枚の巨大なガラスのカバーが被せられ、ボリュームと動きのある複雑な外観を持つ建物が実現しました。巨大な彫刻を思わせるこのフランク・ゲーリーによる建築が、ほかならぬルイ・ヴィトン財団の発信する現代アート作品第一号というわけです。
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Update : 2015.2.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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