2014年の秋にパリの西に位置するブローニュの森にオープンしたルイ・ヴィトン財団美術館。ボリュームのあるモダンなガラス張りの建築は、早くもパリの代表的なモニュメントのひとつに数えられようとしています。LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)グループの芸術のメセナ活動が結実し誕生したこの美術館は、財団の所蔵コレクションの展示のほかに、企画展、コンサート、パフォーマンスなど、あらゆる現代アートとの出会いをもたらしてくれます。
パリのブローニュの森の中にある馴化園(じゅんかえん)(Jardin d'Acclimatation)は、子ども向けの遊具や動物園、庭園が整備された、家族連れで賑わうパリのレジャー・スポットのひとつ。19世紀からの古い歴史を持つこの馴化園の敷地内で、詩的な外観の建物が周囲の自然とハーモニーを奏でながら個性を放っています。流れる雲、また風を受ける帆船を思わせる動きのあるフォルムのこの建物が昨年の10月にオープンしたばかりのルイ・ヴィトン財団美術館です。財団の美術館の建設は、LVMHグループの20年以上にわたる現代アートのメセナ活動を具現化させるための壮大なプロジェクト。自らも現代アートのコレクターであるLVMHグループの会長兼最高経営責任者、ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)氏のイニシアチブによって実現されました。財団の目的は可能な限り多くの人々に現代美術に触れてもらう機会を作り出すことです。パリジャン、フランス人はもとより、世界中の人々がさまざまなかたちの現代アートを前に思いを巡らし、感動を分かち合える場を作り上げたいという願いのもと、この美術館は誕生しました。
ガラスのカバーで覆われ圧倒的な個性を見せている建築は、カナダとアメリカの国籍を持つ建築家、フランク・ゲーリー(Frank Gehry/1929-)によるものです。ブローニュの森の馴化園の庭園を共有するかたちで建てられており、ルイ・ヴィトン財団美術館の来館者は、庭園を介し馴化園にも同時に入園できるシステムです。奇抜でモダンな建築にもかかわらず、その外観は19世紀の面影を残す庭園に溶け込んでいるのが印象的です。8,637uの建物の総面積のうち、美術館部分の面積は約3,850u。大小11のギャラリー、350席のオーディトリアムがコレクションや企画展の展示、コンサート、パフォーマンスなどの開催にあてられています。建物上部には複数のテラスが設けられ、ガラスのファサードの構造を間近で観察できるだけでなく、ブローニュの森の深い緑や、エッフェル塔、デファンス地区の高層ビル群など、近隣の風景を一望することができます。都会、自然、建築、現代アートが一体となったルイ・ヴィトン財団美術館は、オープン以来、刺激と癒しを得られる文化施設として大きな注目を集めています。
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Update : 2015.2.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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