20世紀の美術に大きな足跡を残した画家パウル・クレー。現在、宇都宮美術館で開催中の展覧会「パウル・クレー だれにも ないしょ。」は、国内では4年ぶりとなる大規模な展覧会。愛らしく、そしてどこか謎めいた作品を描いたクレーの「秘密」をテーマにした展覧会の見どころを、宇都宮美術館主任学芸員の石川潤氏に伺いました。
今回の展覧会は、“秘密好きの画家”クレーの「秘密」そのものがテーマです。「秘密」という言葉には、かわいいイメージがありますよね。クレーの作品には、よく「謎めいた」といった形容詞も使われますし、実際、謎と言ったほうがしっくりくるような作品もあると思います。それでも、クレーの非常に魅力的な部分を言い表すときに、「秘密」という語感が、しっくりくるような、愛らしくて魅力的な作品があります。今回はクレーのそうした一面にスポットを当てたいと思ったのです。そして、「秘密」というキーワードから「だれにも ないしょ。」というタイトルを導き出しました。
クレーの特徴は、「秘密」を提示するときの、「身振り」の愛らしさにあると思います。その一方で、クレーの「秘密」には、さまざまな“レベル”があります。ですので、今回の展覧会では、クレーの秘密を、目で見たら分かるレベルから、抽象的で少し難しいようなレベルまで、ちょっとずつ向かっていけるように6章立てにしています。来館者の皆さんには、ひとつひとつステップを踏みながら、クレーの秘密に分け入ってもらえたらと思います。
秘密にはいろんなレベルがあります。皆さんも、心の奥に秘めたものは必ずお持ちだと思うのですが、それを他人に伝えるのは非常に難しいものですよね。その難しさを難しいままに、非常に見事にかたちにしていったのがクレーだと思います。解きほぐせないようなもの、名づけがたいようなものを、どこか愛らしかったり、微笑みを誘ったりするようなかたちにしていったのです。そうしたクレーの本質が、「秘密」をキーワードにすることで見えてくると思います。
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