春から夏にかけて、フランスのノルマンディ地方の美術館で、3年に一度「ノルマンディ印象派フェスティバル」が開催されます。印象派の画家たちは、この地を旅したり、この地に住んだりしました。そのため、ノルマンディは印象派と縁が深い地なのです。フェスティバル3回目の今年は、4月16日から9月26日まで、ノルマンディの各美術館でテーマ別の特別展を開催しています。その中から、印象派の主要画家たちを一堂に集めたルーアン美術館の「マネ、ルノワール、モネ、モリゾ――印象派が描いた暮らしの情景」展をご紹介します。
印象派は、それまでの美術界のアカデミックなスタイルを刷新しました。その一つが、「家族の肖像」です。ルーアン美術館館長で、本展のコミッショナーでもあるシルヴァン・アミック(Sylvain Amic)氏は、「それまで画家が家族を描くときは、尊敬されるべき立派な家族として描いていました。また、家族の中の自分はパレットを手にした画家で、画家として成功したことを示していました。ところが、印象派の時代から、画家たちは人物の内面を描くようになったのです」と説明しています。印象派ではありませんが、印象派の画家たちと親交があった同世代のアンリ・ファンタン=ラトゥール(Henri Fantan-Latour/1836-1904)が自分の妻の家族を描いた《デュブール家の人々》がその好例です。
また印象派の画家たちは、家族だけでなく、画家仲間や友人、コレクターの肖像画を描き続けました。「彼らは、印象派の革新的な考えの支持者でした」と語るのはアミック氏。ピエール=オーギュスト・ルノワール(Pierre-August Renoir/1841-1919)が描いた、画商アンボワーズ・ヴォラール(Amboise Vollard/1866-1919)の肖像は、女性の絵が多いルノワールにしては珍しい男性の肖像です。簡素な背景から、若きヴォラールがかぶった赤いスカーフが効果的に浮かび上がっています。
次ページでは、ルーアン美術館で開催中の
「印象派が描いた暮らしの情景」展の見どころをご紹介します。>>
Update : 2016.8.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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