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イベントレポート
EVENT REPORT

これまで開催したプログラムを
レポート形式でご紹介します。

MMMレクチャー
2019.6.7

クリムトと女たち、そしてウィーンの世紀末文化

日   時:
6月7日(金)18:30~20:00
会   場:
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル3階
講   師:
千足伸行氏(成城大学名誉教授、美術史家)

現在、東京都美術館で「クリムト展 ウィーンと日本1900」(会期:4/23〜7/10)、東京・国立新美術館で「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」(会期:4/24~8/5)と、世紀末ウィーンをテーマとした大規模なふたつの展覧会がほぼ時を同じくして開催されています。今回は、東京都美術館での展覧会の監修を務められた千足伸行氏に、MMMレクチャーでしか聞けないお話を、存分に披露いただきました。

 当日は多くの参加者の方にお集まりいただきました。東京都美術館と国立新美術館で、世紀末ウィーンをテーマとした展覧会が開幕してほぼ1ヵ月半。両展覧会の注目度の高さがうかがわれます。
 冒頭、満席の会場を見渡し、千足氏は「まさに中央区の夜学ですね! 勉強熱心な方々にお集まりいただきまして、ありがとうございます」とにっこり。
「MMMレクチャーでしか聞けない内容を、とリクエストされたので、時間の許す限りお話ししたいと思います」という言葉に参加者の皆さんの期待もふくらみます。
 今回、東京都美術館の「クリムト展」では、日本では過去最多となるクリムトの油彩画25点以上が展覧されています。実はこれは、とてもすごいことなんだとか。
「クリムトの作品を借用するのは、とても大変なんです。クリムトの油彩画は200点ほどしか現存しておらず、クリムトは近代の画家としては極めて珍しい寡作の画家。
1点のクリムト作品は、モネやルノワールの作品5点分にあたるといっていいほどです。どこの美術館にとっても“箱入り娘”なので、めったに借りられない作品ばかり。この規模の展覧会は、次、いつ開催できるか分かりません」
 そして、今回のレクチャーではそんな貴重なクリムト作品をより楽しむためのキーワード「女性」を軸に、千足氏ならではの楽しいお話が次々と飛び出しました。
「クリムトの人生、そしてその芸術は、女性を抜きにしては語れません。クリムトは“ウィーンのドンファン”の異名を持ち、艶聞には事欠きませんでした。クリムトが亡くなった時、10人以上の『パパはクリムト』という子どもが現れたともいわれています」と千足氏。そんな軽妙な語り口のなか、会場のスクリーンには東京都美術館での展覧会出品作を中心にクリムトが描いた女性の肖像画が次々と映し出されました。
 生きたファム・ファタルとして多くの男性を虜にしたアルマ(・マーラー)、クリムトが2回も肖像画を描いたアデーレ・ブロッホ=バウアー、そしてクリムトの生涯のパートナーとして知られるエミーリエ・フレーゲ……。女性たちの個性とともに、その妖艶な美をとらえるクリムトの筆致に会場からはため息が漏れます。

▲千足伸行氏 成城大学名誉教授。美術史家。1964年東京大学を卒業後、TBS(東京放送)を経て国立西洋美術館勤務。
1970年西ドイツ政府給費留学生としてミュンヘン大学に留学、1972年国立西洋美術館に復職。1979年成城大学文芸学部助教授を経て教授、2012年より現職。 現在は美術評論家として展覧会の企画などで多忙な日々を送っている。

「クリムトの代表作《接吻》に描かれている男女は、クリムトとエミーリエといわれても不自然ではありませんね。二人の親密な関係を証明するような写真や旅先からの葉書も残っていますが、それがプラトニックなものであったか、いわゆる男女の関係であったかは、多くの研究者が必死に調査、研究しているにもかかわらず、いまだ真相は藪の中です」
 そんな謎めいた一面もクリムトが多くの人々を惹きつけてやまない魅力なのかもしれません。そんなクリムトが死の床で最後に口にしたのは「エミーリエを呼んでくれ」という言葉だったそうです。
「当時のウィーンの有名な美術史家は、『クリムトは人を幸福にする義務を果たさなかった。彼が生涯愛したエミーリエに与えられた唯一の特権とは、彼の苦しい最期を看取ることだけだった』という言葉を残しています」
 生涯独身を貫いたクリムトとエミーリエ。最後に紹介いただいたこの言葉に、参加者の皆さんはさまざまな想いを巡らしておられたようです。会場には、ウィーン世紀末の濃密な香りが立ち込めたような、芳醇な余韻がいつまでも残っていました。

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