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セーヴル国立陶磁器美術館 Musée national de Céramiqueマダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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親愛なる日本の皆さまへ

皆さま、セーヌ河左岸に位置する「セーヴル陶芸都市」へ足を運ばれたことはございますか。ヴェルサイユ宮殿の庭のデザインで知られるル・ノートル(1613-1700)が手掛けたサン=クルー公園のはずれにあり、公共の交通機関で簡単に訪ねることができます。陶磁器をデザイン・制作するアトリエを持つ国立製陶所と、5万点におよぶ世界でも特異なコレクションを有する国立陶磁器美術館からなり、丘の上からは、セーヌとパリの素晴らしい景観が望めます。

製陶所を造るのにセーヴルという場所を選んだのは、ルイ15世(1710-1774)の愛妾ポンパドゥール公爵夫人(1721-1764)でした。もともとヴァンセンヌにあった製陶所は、1756年にここに移設され、1760年には王立セーヴル製陶所の名称を与えられたのです。そして、ここで働く芸術家、彫刻家、装飾家のおかげで瞬く間に大成功を収め、現在に至っています。

1824年には、製陶所所長のアレクサンドル・ブロンニャール(1770-1847)が、国立陶磁器美術館を設立。現在は幅130mの印象的な建物(1876年)が美術館となっています。貴重な品々を含む、非常に多様な陶器コレクションが時系列・技法別に展示されているので、館内をご覧になれば、陶磁器の技法の変遷をたどり、世界各地で各時代にどのような素材が作陶に用いられてきたかが、よくお分かりいただけるでしょう。また、この美術館は教育的な役割も担っており、研究者にとっても欠くことのできない存在となっています。

それでは、最初の展示室から見学を始めることといたしましょう。ここで来館者を出迎えてくれるのは、ジャン=ジャック・フシェール(1807-1852)作のアレクサンドル・ブロンニャールの胸像。訪問当日、わたくしたちは、とても感じのよい日本人ガイドに案内していただくことになりました。その方の説明によれば、「陶器(セラミック)」という単語は、粘土質の土で作られ、高温で焼く際に土が物理化学的な変化を受けたものを指す一般的な用語であるとのこと。陶芸は最初の「火の芸術」で、旧石器時代(紀元前2万5000年)には既に出現していました。元来は実用品として作られ、その後、美術品になりました。このミュゼの展示品でそれを物語るのは、エジプトの墓から出土した数多くのターコイズブルーの小像(紀元前1550-前1069年)です。ギリシャで、紀元前7世紀から2世紀にかけて制作された陶器の中には極めて美術的価値の高いものがあり、のちに新古典主義の芸術家たちに大きな影響を与えました。彼らは、オークル地や黒地にあしらわれた装飾や、神話の英雄を描いた円柱型クラテル(深鉢)に施された幾何学的モチーフに魅せられたのです。9世紀から15世紀のヨーロッパ、とりわけスペインとイタリアにおいて発達したのが、ファイアンス陶器です。ファイアンス陶器は、中世にはフランスへ紹介され、食器として使われるようになりました。展示室に置かれていたオークル、赤、黄、深緑の色調の釉薬が施された優美なピッチャーは、そのことを物語る一品です。

最初の展示室の中央では、日本の企業であるDNP(大日本印刷株式会社)が開発したとても興味深い教育目的の装置があるので、ぜひご覧になってください。カオリンを含まないことから、表面が傷つきやすいソフトペーストの磁器の製造過程がよくお分かりいただけるでしょう。17世紀末のフランスで完成されたこの磁器は、非常に繊細な色付けが可能なことから、セーヴルにおいて洗練の極みに達します。金銀細工師ジャン=クロード・デュプレシス(1695頃-1774)作の《デュプレシスと子供》(1753-1754年)の制作過程が見られる映像もありますので、ぜひ、ご覧になってみてください。観覧者が自分で皿の絵付けを体験できる装置もありますが、こちらもまた、DNPが開発したものです。


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