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Chers amis,親愛なる日本の皆さまへ

パリ造幣局は、「禿頭王」ことシャルル2世(823-877)の治世下の864年に設立されました。貨幣鋳造という王権に属する重要な任務を担うこの施設は、フランスでもっとも古い行政機関のひとつで、なんと今なお稼働中。パリの中心地で金属を加工するもっとも古い“工場”でもあるのです。
1775年以来造幣局は、セーヌ河沿いのコンティ河岸通り、ルーヴル美術館とポン=ヌフの向かいにある壮麗な建物に置かれ、一般の人々にはほとんど知られていませんでしたが、この度、建物の改装工事を経て、一般公開されることとなりました。パリの中でも絶好のロケーションで、古典的で優美な建物が目を引きます。内部には近代的な工房があり、職人が働いているところを見学できる(月〜金)ほかにはないユニークなスポットです。硬貨やメダルの制作工程を順に見てゆくと、昔から受け継がれてきた技がよく分かります。また17万点のコレクション(硬貨、メダル、宝石、装飾品、鋳造された彫刻などの美術品)のうち、2,000点がここにある貨幣博物館「ミュゼ・デュ・11コンティ」に展示されています。

ルイ15世(1710-1774)の治世下、造幣局はパリの中でも、もっとも大規模な工事が行われた場所のひとつでした。中庭の周りにさまざまなアトリエが入った、均整のとれた新古典様式の宮殿を造り上げたのは、建築家のジャック=ドニ・アントワーヌ(1733-1801)。列柱やペディメント(破風部分)のレリーフ、彫刻といった建物の装飾は、彫刻家のジャン=バティスト・ピガール(1714-1785)ら、当代きっての芸術家たちが手掛けています。河畔沿い120メートルにわたって続く堂々たるファサードは6つのイオニア式円柱で飾られており、それぞれの上部には非常に見事な彫刻が施されています。威圧的な印象すらあるファサードですが、これは君主の財力を誇示する場でもあるのでしょう。ゲネゴー通り沿いのファサードはより自由に仕上げられています。

中央には印象的なドームがありますが、これは、かつて鋳造所の煙突があったところ。ドームの下は、現在はブティックになっています。河岸から見ると奥の方に馬蹄形の壮麗な正面前庭が見えます。建物の入り口をくぐると、ドーリア式の5つの列柱がドーム型の格天井を支える広いエントランスホール。その右手にある正面玄関は、「帝政風」といわれる非常に珍しいスタイルで、3つの欄干が2階まで続いています。2階にはいくつものサロンがあり、ここでは現代アートの企画展が行われています。大サロンは奥行き16メートル、幅13メートル、高さ12メートルと巨大でとても明るい部屋。22のコリント式円柱と金箔をつけた化粧漆喰で装飾されています。暖炉の両側にはブロンズで装飾された2点の豪華なマホガニーの家具があります。この階には、かの有名なシェフ、ギー・サヴォワの星付きレストランがあるのですが、味はもちろん、セーヌ河やルーヴル美術館、ポン=ヌフを望む眺望は一見の価値ありですよ。

1階に戻ると、30メートルの回廊に囲まれた荘厳な中庭に出ます。エントランスホールの軸線上には、造幣局の中心をなす要所「大貨幣鋳造所」の入り口の柱廊が立っていますが、ここは今なお、実際に貨幣の鋳造が行われる工房として機能しているのです。ペディメントには天秤を持った「善意」の擬人像と、硬貨が詰まった角の中身をあけている「富の豊穣」の擬人像が彫刻されています。4つの扉の上には、貨幣の歴史において重要な役割を果たした4人のフランス国王―アンリ2世、ルイ13世、ルイ14世、ルイ15世の胸像があります。
中庭のひとつに位置する、道具類と彫版の新しいアトリエをご覧ください。銅の薄板に丸い穴がたくさんあいていて、硬貨をつくるときの第一段階、生の金属から円形を切り出した後の金属板の様子がよく分かります。

Update : 2018.4.2

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