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《地獄の門》のために制作された大きな石膏像《三つの影》(1886年以降)をはじめとするオーギュスト・ロダン(1840-1917)の一連の作品も展示されています。また、クロード・モネ(1840-1926)作《ジヴェルニーの睡蓮》(1917年)は、画家自らが美術館に寄贈したもので、明るい緑や黄緑にバラ色や光沢のあるグレーの斑点など、さまざまな色合いで水の世界が柔らかく描かれています。
パティオを取り囲む展示室には、20世紀初頭の具象画がたくさん集められています。ラウル・デュフィー(1877-1953)の《ルアーヴルの港》(1906年)は軽やかなタッチが旗の鮮やかな色合いに調和した作品。ソニア・ドローネ(1885-1979)の《黄色いヌード》(1908年)は様式化、幾何学化された人物像を強い色彩で描き、フォーヴィスムに近づいていることが見て取れます。ナビ派のモーリス・ドニ(1870-1943)の《9月の晩》(1911年)では、魅力的な浜辺の情景が調和した非現実的な色彩で(バラ色とエメラルドグリーンで海が)描かれています。ピカソの《杖をついて座る男》(1971年)は、画家が老いゆく自らの姿を、杖を持った感動的な自画像として描き出した作品です。

また、西洋文明に問いを投げかけた芸術家も紹介されています。フロタージュ(こすり出し)の技法を用いたマックス・エルンスト(1891-1976)の《森》(1925年)、シャガール(1887-1985)の《赤い馬》(1938-1944年)、そして非具象芸術へとたどり着いたカンディンスキーの作品など、お見逃しになりませんように。とりわけ、カンディンスキーの《黒い横糸》(1922年)は、色づけされたさまざまな幾何学形態が浮かぶダイナミックな作品です。
次の展示室は新館へと続いており、1945年以降の抽象芸術が展示されています。身振りの痕跡に関心を寄せたピエール・スーラージュの《1974年1月12日》(1974年)、束をつくり出すように見える黒く豊かな線の自由さが目を引くハンス・アルトゥングの《コンポジションT.54.15》、凹凸の視覚的効果がユニークなヴァザルリの《アドム》(1965年)といった作品に、わたくしは心を引かれました。

ル・キューブでは、年代別の展示はなく、現代アートのコレクションをテーマ別に時代を横断して紹介しています。展示の始まりは、3階の「時と記憶」。ゲルハルト・リヒターの《スピーゲル》(1991年)をはじめとする一連のモノクローム絵画による抽象芸術からスタートします。ナチスの軍服を着た《ルディ叔父さん200》 はモノクローム写真を用いたフォト・ペインティングですが、ぼかしてあるにもかかわらず、極めてリアリスティックなその表現力に驚かされます。同じ展示室には、クリスチャン・ボルタンスキーの《モニュメント:ディジョンの子供たち》(1986年)も展示されています。これはモノクロの子供の肖像写真を電球で照らしたインスタレーションです。

1階は国土、自然、環境に関する作品が展示されています。ジョアン・ミッチェル(1925-1992)の《無題(グランド・ヴァレーV)》(1983-1984年)は、彼女が愛する場所が鮮やかな色で表現されています。バルコニーからは、デュアン・ハンソンの《フリーマーケットの女性》(1969年)という作品をご覧になってみて。通りからも見ることのできるこの作品のリアルなことといったら──青いTシャツを着た女性が椅子に座り、本や雑誌、絵などの身の回りのものを売っている、本物以上にリアリティのある作品なのです。アートとは一体なんなのでしょうか? 見る者にそんな疑問を投げかける作品です。
最後に、見学の締めくくりである、礼拝堂へと参りましょう。ここでご覧いただけるのは、コレクションの中でも非常に重要な作品、ビル・ヴィオラの映像作品《ナントの三部作》です。衝撃的なこの作品をご覧になった方はきっと、生から死への過程について、各々思いをめぐらせることでしょう。
ナント美術館の成功の鍵は、歴史的建造物を見事に改修すると同時に、それに現代建築を見事に調和させたことでしょう。外観・内部ともに白を基調にし、すべての展示室に自然光を取り入れることによって、比類のないコレクション全体に一貫性と統一性が与えられているのです。

友情を込めて。

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Update : 2018.6.1

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