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ボナパルト家の邸宅マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
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一家が歴史の波に翻弄される中、ナポレオンは1778年、9歳でアジャクシオを離れ、1785年に父が亡くなるまで帰郷することはありませんでした。フランスへ渡ったナポレオンは、兄ジョゼフ(1768-1844)とともにオータンの中学校に入学。翌1779年、ブリエンヌの士官学校に入学、5年後には、パリの陸軍士官学校への入学が許可されました。そして、1786年から1793年、士官として故郷の島に5回滞在しています。
1799年、エジプト遠征から戻ると、将軍となっていたナポレオンは、家族の邸宅に短期間滞在し、「アルコーヴの間」に泊まりました。ナポレオンが第一執政官に任命されると、母レティツィアはナポレオンの弟のルイ(1778-1846)を伴って、この家を後にします。1843年、邸宅はナポレオンの兄ジョゼフのものとなり、その死後はジョゼフの娘のゼナイード(1801-1854)が受け継ぎ、その後、ナポレオンの弟ルイの息子ナポレオン3世(1808-1873)が買い取った時には荒れ果てた状態となっていました。
ナポレオン3世は、コルシカ島で暮らしたことはありませんでしたが、皇帝の地位につくと、コルシカの人々は彼を新しい英雄として喝采をもって迎えました。ナポレオン3世は1860年、妻である皇后ユージェニー(1826-1920)とともにコルシカ島を訪れ、伯父に敬意を表し、彫像を作らせました。また、ナポレオンの生家も、建築家のパッカールとジェローム・マリオリ(1812-1885)に依頼し、修復・装飾させました。1869年のナポレオン生誕100年の際には、皇后ユージェニーが皇太子(1856-1879)を伴って再びこの邸宅を訪れています。皇后が亡くなると、邸宅は皇后の後継者で、ナポレオンの一番下の弟ジェローム・ボナパルト(1784-1860)の孫にあたるヴィクトル王子(1862-1926)の所有となり、王子によって国に寄贈されました。1967年に国立のミュゼとして、マルメゾン国立美術館の付属施設となりました。

今日、わたくしたちが見学する邸宅は、ボナパルトの時代の遺構ではなく、第二帝政期のもののようです。17世紀に建造されたこの家は、ボナパルト家の紋章以外は特別な印はなく、洗練されたシンプルなファサードをしています。ここから中へ入りましょう。壁紙を模してステンシルで模様が描かれた壁の装飾は1860年のものです。それぞれの部屋に異なる装飾がされています。マリオリによって描かれた天井をご覧ください。なんと繊細な美しさでしょうか。

美術館の見学は、3階のコルシカ島の歴史に関する展示室から始まります。イアサント・ド・ラ・ペーニャ(1706-1772)による島の巨大な地図(1741年)や《コルシカの将軍パスカル・パオリ》を描いた18世紀末の版画があり、暖炉の上には、貴族の服装をした《シャルル=マリー・ボナパルト》の美しい肖像画が存在感をたたえています。次の展示室では、ナポレオンの子供時代や青少年時代のボナパルト家の様子が紹介されていて、ナポレオンの洗礼証書や彼の幼少期を思い起こさせるリトグラフが展示されています。また、ナポレオンの母を表した、カノーヴァの作品に基づく新古典主義風の《白大理石製の母君の胸像》もあります。

「アルコーヴの間」は、1799年10月、ナポレオンがエジプト遠征から戻った際に滞在した部屋だと言われています。無垢のマホガニーの舟形ベッドと、王政復古期の仕事机、高級家具職人ジュゼッペ・マッジョリーニ(1738-1814)による寄木細工のイタリア製チェスト(18世紀末)が置かれています。さらに、一族の肖像をあしらった細密画やカメオ(19世紀初頭)、仕事机の側に立つナポレオンを描いた金色のブロンズ製置き時計なども目を引きます。

ナポレオンの生家の歴史を物語る展示室は、この家の歴代の主たちについて教えてくれます。まずはこの家をアジャクシオでもっとも美しい邸宅のひとつにしたナポレオンの母レティツィア。ロベール・ルフェーブル(1755-1830)による小型ながら素晴らしい肖像画《宮廷の衣装を纏ったレティツィアの肖像》には、正装しティアラを身につけた姿で描かれています。レティツィアは、この家を最終的に離れる際には、家が家族の所有であり続けるように手を尽くしました。そして、一旦いとこの所有となった後、スペイン王も務めたナポレオンの兄ジョゼフ・ボナパルトが1843年に買い戻しました。フィラデルフィア近くのポイント=ブリーズの所有地にいるジョゼフを描いたイノサン=ルイ・グボー(1780-1847)作の絵画があります。金箔を貼った木製の翼を広げた鷲は、ナポレオンが選んだシンボルです。

Update : 2020.11.2

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