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アンジェ城とジャン・リュルサ美術館マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
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Chers amis,親愛なる日本の皆さまへ

昨年の夏、ミュゼが一斉休館となる前のこと、わたくしはフランス西部、アンジュー地方の中心都市、アンジェへの旅に出ました。アンジェは穏やかな気候と数多の素晴らしい建造物で知られる町。わたくしはこの機会に、これぞ要塞といった佇まいの18世紀の城、そして現在は「ジャン・リュルサ美術館」としてその扉を開いている17世紀の聖ヨハネ病院を訪れました。

町のシンボルのアンジェ城は、ユネスコの世界遺産に登録されているロワール渓谷に点在する22の古城のひとつ。アンジェの中心地、高さ25mの岩壁からメーヌ川を見下ろす岬に位置する堂々たる古城で、ある重要な美術作品を所蔵しています。それは、1375年頃、アンジュー公ルイ1世(1339-1384)の注文で制作された《黙示録のタピスリー》。世界に類のない中世タピスリーの傑作です。

河岸から見ると、この古城は来る者を拒む難攻不落の要塞といった風情です。全長800mの城壁からそびえるのは、石灰岩と砂岩を帯状に交互に並べた黒い頁岩でできた17の防御塔。高さ30m幅18mで、大砲の発射用の穴が穿たれた壁でつながっています。もともと、塔にはスレート葺きの屋根がありましたが、16世紀に銃器を使いやすくするために取り除かれました。堀は14世紀と16世紀に拡張され、18世紀には菜園と庭に変わりました。

跳ね橋を渡り、両脇に円形の塔がある印象的な門を通って城壁の中へと参りましょう。一歩足を踏み入れると、そこは外側からは想像もつかない空間。白い砂岩の建物に緑が点在する美しい庭園が広がっているのです。2万uを超える広大な城ですが、全体を俯瞰する案内図がありますから、どこのエリアに何があるかはすぐに分かります。まずは、この地方の典型的な建築スタイル、アンジュー・ゴシック様式で建てられた礼拝堂を見てみましょう。この礼拝堂は長方形の身廊を持ち、アーチ頂上の要石には3つの繊細な彫刻が施されています。

そして、シャトレ(塔)をくぐれば、王の居城です。その歴史をざっと振り返ってみましょう。この城が、洗練され宮廷文化を育んだ強大な歴代のアンジュー公によって領主の住まいへと改築されたのは、15世紀のことでした。もっともよく知られるのはアンジュー公ルネ(1409-1480)。回廊を設けて居住スペースを拡張し、1450年代にはシャトレと母屋を建設させました。16世紀には、宗教戦争の後、国王アンリ3世(1551-1589)が城の取り壊しを命じ、17世紀には牢獄、そして駐留地へと姿を変えました。第二次世界大戦中は弾薬庫として使われ、1875年には城は歴史的建造物の指定を受けます。そして1948年、ここに再び庭園が造られ、一般に公開されたのです。

1952年、《黙示録のタピスリー》を収蔵するためのシンプルな建物が建てられましたが、それが見事にこの場所に溶け込んでいます。タピスリーのギャラリーは領主の中庭を閉鎖した古い建物の跡地にあるのですが、この地の景観を守るため、城壁の高さを超えないように少しだけ掘り下げられた場所に建てられているのです。1996年には、保存環境の改善のために、ギャラリーの全面的な改装がなされています。2009年1月には、王の居城は火災により大きな被害を被りますが、幸い《黙示録のタピスリー》は難を逃れました。

Update : 2021.7.1

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