音楽博物館
フランスの音楽の総本山、ミュゼ・ド・ラ・ミュージック<音楽博物館>
音楽博物館常設展 ジョン・レノン特別展
1.シテ・ド・ラ・ミュージックのエントランス。
1.シテ・ド・ラ・ミュージックのエントランス。
パリの北東、19区のパーク・ド・ラ・ヴィレット内にあるシテ・ド・ラ・ヴィレットは、音楽に関する施設の集合体です。フランス人の建築家、クリスチャン・ド・ポルツァンパークが設計し、1995年にオープンしました。
この中にあるのは、コンサート・ホール、メディアテーク、ワークショップなどが行われるアトリエ、そしてカフェも併設されています。そのシテの中央に位置するのが音楽博物館です。コンクリートとガラスを多用したモダンな内観です。
西洋音楽と楽器の歴史を辿る
2.ミュゼ・ド・ラ・ミュージックの入り口。入ってすぐにブティックがある。
展示は17世紀から20世紀までの時代に則して、9つに分類されています。なぜ17世紀からなのでしょう…。もちろんそれ以前にも音楽は存在していましたが、ヨーロッパの中世の頃の楽器や楽譜は、今ではほとんど残っていません。音楽が系統立てて後世に伝わるようになるには、17世紀まで待たなければなりませんでした。 また楽器も同様で、それ以前は消耗品として使われていたのです。 楽器が工芸品として美術的価値も持ち、貴重品として扱われ始めたのがこの頃でした。
この博物館の展示の素晴らしいところは、楽器を透明なガラスケースの中に吊るす様にして陳列し、
3.「ヴェルサイユの音楽」のコーナーにあるギター。
表も裏も見ることができるように配慮しているところです。細部までよく見ることができるので、当時の職人の卓越した技を心ゆくまで堪能できます。またコーナーには必ず当時の演奏会場の模型があり、会場の構造や内装が再現されています。時代の雰囲気が実感できる画期的な展示です。
2.ミュゼ・ド・ラ・ミュージックの入り口。入ってすぐにブティックがある。
3.「ヴェルサイユの音楽」のコーナーにあるギター。
ヨーロッパの音楽の揺籃期、17世紀
いちばん初めのコーナーは「イタリアのバロック」。ヨーロッパの器楽やオペラの揺籃期は17世紀初めのイタリアから始まります。1607年、モンテヴェルディ作の史上初のオペラが上演された部屋の模型が最初に置かれています。その頃に作られたきらびやかな装飾のクラブサンや、繊細な象嵌を施されたリュートやマンドリン、ギターなどは、ため息が漏れるほどの美しさです。
4.1677年製造のイタリア、ボローニャのクラヴサン。大理石製に見えるよう、トロンプ・ルイユが施してある。鍵盤には華麗な模様が彫られてある。/ 5.「イタリアのバロック」のコーナーにあるリュート。
その次は17世紀後半の「ヴェルサイユの音楽」。この頃、フランスの王室はヨーロッパでも影響力を持ち始め、新しいローマと呼ばれるほどの繁栄を誇っていました。ヴェルサイユ宮殿では、太陽王と呼ばれ、自らもフルートやギターを演奏したというルイ14世が音楽鑑賞を好み、ジャン=バプティスト・リュリーが宮廷楽団を監督していました。1674年7月4日に行われた演奏のオーケストラの楽器の構成や、使われた楽器群をここで見ることができます。
6.ヴェルサイユ宮殿の模型。 /7.ヴェルサイユ宮殿の演奏会当時の笛。現在とほとんど形は変わらない。
4.1677年製造のイタリア、ボローニャのクラヴサン。大理石製に見えるよう、トロンプ・ルイユが施してある。鍵盤には華麗な模様が彫られてある。
5.「イタリアのバロック」のコーナーにあるリュート。
6.ヴェルサイユ宮殿の模型。
7.ヴェルサイユ宮殿の演奏会当時の笛。現在とほとんど形は変わらない。
音楽も裾野を広げる、18世紀
8.ずらりと並ぶハープ。18世紀の展示室。
「パリのオペラとサロン」では18世紀前半の貴族社会での作品や楽器が展示されています。詩情豊かな悲劇のオペラなどが発表されると共に、貴族のサロンでは音楽が手軽に演奏されるようになってきました。小型のクラブサンやハープ、打楽器などが展示されています。またこのフロアには小さなコンサート・スペースがあり、当時の音楽を演奏するデモンストレーションも行われています。
ますます音楽が広まって来た時代を説明するのが「公開コンサートと革命以前の楽器製造人」のコーナー。時はちょうどモーツァルトがパリで話題をさらった辺りです。またこの頃は楽器作りの黄金期とも言える時期で、特にバイオリンは、イタリアのストラディバリウスが次々と名器を作り上げました。この稀代の名工の作品を集めた特別のケースがあり、2体のバイオリンの他、ポシェットと呼ばれる細い小型弦楽器、ギター、チェロなどが収められています。また裏に使われている木材など、珍しいものも展示されています。
9.18世紀のフロアにあるギターと弦楽器。/10.18世紀、貴族のサロンなどで演奏されるようになった楽器の数々。
8.ずらりと並ぶハープ。18世紀の展示室。
9.18世紀のフロアにあるギターと弦楽器。
10.18世紀、貴族のサロンなどで演奏されるようになった楽器の数々。
近代音楽の確立、19世紀
11.建築的にも面白い「ロマン派のオーケストラ」のフロア。この時代の人気楽器であるピアノがずらりと並んでいる。
「コンクリートむき出しの吹き抜け天井のモダンな部屋のテーマは「ロマン派のオーケストラ」。展示はロマン派の巨匠ベートーベンの肖像画から始まります。19世紀、フランスは革命の後に帝政を経て共和制となり、社会的には産業革命による工業の隆盛など、変化の多い時代でした。音楽も世相を反映して多様化し、それに合わせてトロンボーンやコントラバスなどが作り出されました。また一般市民のために演奏する機会が増え、音楽がよりポピュラーなものとなったのもこの頃です。この時期に生まれたロマン派の音楽に欠かせないふたつの楽器、バイオリンとピアノがズラリと並んでいます。
12.「ロマン派のオーケストラ」のもうひとつの主役楽器、ヴァイオリンのコーナー。
「グランド・オペラと叙情オペラ」では、オペラ・ガルニエができる前のペレティエ劇場、ワグナー歌劇で有名なバイルートの劇場の模型を見学します。オペラがいっそう盛んとなったこの時代のフランスとドイツの代表的なオペラハウスです。ロッシーニやオッフェンバッハが活躍したのがこの頃でした。
11.建築的にも面白い「ロマン派のオーケストラ」のフロア。この時代の人気楽器であるピアノがずらりと並んでいる。
12.「ロマン派のオーケストラ」のもうひとつの主役楽器、ヴァイオリンのコーナー。
音楽は広く人々のものに、20世紀
「野外での音楽」では、軍隊の鼓笛隊、公園のキオスクでの小演奏会など、20世紀の音楽の特徴のひとつとして野外で演奏される機会が増えてきたことを説明しています。この時期発達した吹奏楽器が紹介されています。
次の「万国博覧会」のコーナーでは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ロンドンやパリで行われた万国博覧会の華やかな様子が展示されています。特にパリは何回もその博覧会場に選ばれ、ヨーロッパの中心地としての地位を確立しました。エジソンが発明したステレオ装置も博覧会で展示され、音楽鑑賞はますます人々に身近なものになってきました。これらの文明の発明品によって、音楽も新しい時代を迎えるのです。
13.「野外での音楽」のフロアにある吹奏楽器のコーナー。/14.パリ万国博覧会の中心となったトロカデロの模型。
13.「野外での音楽」のフロアにある吹奏楽器のコーナー。
14.パリ万国博覧会の中心となったトロカデロの模型。
世界中の楽器を集めたフロアも
展示の最後には「世界の楽器」が展示されています。フランス政府に1887年に贈られたインドネシアのガムラン楽器一式をはじめ、アフリカ、中近東、インド、アジアなど世界中から集められた楽器が並んでいます。もちろん日本の和楽器も揃っています。
15.世界の楽器を紹介するフロア。手前に見えるのはガムラン楽器の一式。/16.日本の琵琶や三味線、琴、尺八なども紹介されている。
15.世界の楽器を紹介するフロア。手前に見えるのはガムラン楽器の一式。
16.日本の琵琶や三味線、琴、尺八なども紹介されている。
田中久美子(文)/ Andreas Licht(写真)
ジョン・レノン特別展
音楽博物館
© Andreas Licht
所在地:
221, avenue Jean Jaurés 75019 Paris
地図:
こちら
休館日:
月曜日
開館時間:
火-土曜 12:00-18:00
日曜のみ 10:00-18:00
入館料:
一般:7ユーロ
割引:3.4ユーロ(18歳以下)
URL:
http://www.cite-musique.fr/
<展覧会情報>
音楽博物館では、没後25周年を記念した展覧会「ジョン・レノン、 unfinished music (終わらない音楽)」展を2006年6月25日まで開催中です。本展カタログはインフォメーションセンターにて閲覧いただけます。 ジョン・レノンunfinished music展
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インフォメーションセンター
音楽博物館の公式ガイド・ブックをインフォメーションセンターにてご覧いただけます。 musee
 

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。

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