Francais 日本語 ニッシム・ド・カモンド美術館
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▲外の庭に面したファサード。
© Luc Boegly

中庭と外庭を挟んで建つこの邸宅は、フランス建築の伝統を受け継ぎ、18世紀の貴族階級ならではの気品に溢れています。中庭側にあるファサードは、とてもシンプル。簡素という表現がふさわしいほどです。外庭側の建物はモンソー公園から見える小さく雰囲気のよい庭園に面して、コリント式円柱の美しい、ロトンドのある両翼が直角に設けられています。


▲当時のままに残されたキッチン。
© Jean-Marie Del Moral

中庭からは、そのまま地下1階に行くことができます。広い玄関ホールは、大階段の後ろにある使用人の仕事部屋にも通じています。伯爵は客人を迎えると、この階段を通って2階の応接室へと上がってゆきました。回廊にさりげなく置かれているのは、この家の主の洗練された趣味を物語る品々。ジャン・アンリ・リースナー(1734-1806)の焼き印が押された1780年頃の荘重なマホガニーの事務机や、鍍金を施した鉛製のイルカが載せられた、赤大理石製の貝殻型のフォンテーヌ(1750-1760頃)など、独創的な品々がありますので、是非、ご覧になってみてくださいね。


▲きちんとセットされた食卓。
© Jean-Marie Del Moral

そして、美しい美術品に夢中になって、使用人たちが用いた品々をお見逃しにならないように。そうした品々を見ながら、この裕福な館での使用人の生活に想いを馳せるのは、ほんとうに興味深いものです。さらには、モイズ・ド・カモンドがいかに“快適さ”ということに並々ならぬ関心を抱いていたかもお分かりいただけるかと思います。総タイル張りの可愛らしいキッチンをご覧ください。においや物音をすべて避けようと、キッチンは他の部屋からしっかりと離されていますし、大きなかまどやオーブンなど、邸宅にふさわしい設備のあるこのキッチンの機能的なことといったら!そして、数々のキャセロールや銅製のお菓子の焼き型などが、まばゆいばかりに輝いているのです。

ハッチ(料理の出し入れ口)から見える使用人の食堂には、およそ10名分の食卓がきちんと調えられたテーブルが再現されています。

玄関ホールから屋根裏までは、空圧式エレベーターで昇ることができます。正面階段の照明は、とても美しく大きな電気ランタンで、金ブロンズ製の明かりが8つ付けられています。その明かりのほか大階段を上がると、応接広間に出られます。このランプはこの邸宅の中で唯一の複製品です。

この邸宅を回られる際に、常に念頭に置いておかねばならないことがあります。それは、家具調度や芸術品の配置は念入りに決められたものであり、そこには、シンメトリーやバランスを好んだ伯爵の趣味が反映されているということです。

それでは、まずは彫刻を施したコナラのボワズリー(板張りの壁)のある大きな書斎に入ってみることにいたしましょう。壁には、オービュッソンの素晴らしいタピスリーが6枚掛けられており(1775-1780頃)、ジャン・バティスト・ウードリー(1686-1755)のカルトンに基づくラ・フォンテーヌの寓話(1621-1665)が描かれています。床に敷かれた絨毯(1760-1770頃)もまた、オービュッソン製で、青、赤、黄の色がタピスリーと調和しています。さらには、マルタン・カルラン(1730-1785)の傑作、白大理石の天板を載せた長方形の小さなテーブルをはじめ、数多の優美な小テーブルが、この部屋を調和の取れた空間にしているのです。


▲白と金のボワズリーの美しい「グラン・サロン」。
© Jean-Marie Del Moral

その次は「グラン・サロン」です。サロンは2枚扉の窓がついた明るく居心地のよい角部屋で、階段で外庭に出ることもできます。白と金で彩られたコナラのボワズリーは、パリにあるロワイヤル通りの建物から移築されたものです。ボワズリーの枠にはめ込まれたいくつもの大鏡が、外の庭やモンソー公園の樹々の緑を映し出します。

ジョルジュ・ジャコブ(1739-1814)が制作した家具(1785頃)のなかには、めずらしいことに、当時のタピスリーが残されています。部屋の中央には、可愛らしいペデスタル・テーブル(1本脚の小型円卓/18世紀末)がありますが、テーブルの上の美しい瓶(18世紀初頭)に、是非注目なさってください。梅瓶(めいぴん)と呼ばれるこの瓶は、ブロンズゴールド製で漆塗りが施され、スフィンクスを彫刻した台もまた、ブロンズゴールドで作られています。かつてルイ15世(1710-1774)の愛妾、ポンパドゥール夫人(1721-1764)が所有していたということからも、この品がいかに価値あるものかがお分かりになりましょう。


▲絵画の飾られた「サロン・ド・ユエット」。
© Jean-Marie Del Moral

おつぎは、邸宅の中央にある楕円形のサロン「サロン・ド・ユエット」へと参りましょう。ジャン・バティスト・ユエット(1785-1811)による、羊飼いの男女の愛を描いた絵画のために、特別に用意されたサロンです。暖炉の前には、王室家具調度管理官邸に雇われていた名高い指物職人ジャン・バティスト・ブラール(1725-1789)制作の美しい屏風があります。かつては、ヴェルサイユのルイ16世(1754-1793)の遊戯の間を飾ったというこの屏風をはじめ、部屋の統一感を乱すものは、何ひとつとしてありませんでした。

グラン・サロンのはす向かいには、緑色に塗られたボワズリーの、明るい食堂があります。食堂に展示された数多くの銀製品のなかには、ロシアの女帝エカテリーナ2世(1729-1796)が、1770年に金銀細工師ジャック・ニコラ・ロティエール(1736-1788)に命じて作らせた、貴重なオルロフ食器セットも含まれています。


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