Francais 日本語 ニッシム・ド・カモンド美術館
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▲「陶磁器の小部屋」。
© Jean-Marie Del Moral

食堂に隣接する「陶磁器の小部屋」は、この蒐集家の魂が宿るような空間といえましょう。ガラスケースの中には、セーヴルの食器セットが飾られていますが、なかには、かの有名な博物学者ビュフォン(1707-1788)の代表作の挿絵をモチーフにした「ビュフォンの鳥」(1780年頃)と呼ばれるセットもありますので、是非、ご覧になってみてくださいね。山鶉の眼をモチーフにした緑色のお皿には、それぞれに異なる鳥が精巧に描かれていて、裏にはその鳥の名前が記されています。伯爵はこの部屋をとりわけ愛し、一人きりのときにはここで、食事をしていたそうです。


▲小ぶりながら美しい書斎。
© Luc Boegly

ギャラリーを抜けたら、小さな書斎へいらしてください。見事な寄木細工の家具や美しい絵画があります。暖炉の両側にはヴェネツィアの風景画が2枚掛けられています。イタリアの画家、フランチェスコ・ガルディの代表作『ピアッツェッタとエスクラヴォン桟橋』と『海の税関』です。ジャン・バティスト・ウードリーによる『ルイ15世の狩猟』(1733-1745)という作品群は、コンピエーニュ城でのルイ15世の狩猟の様子を描いた壁掛けタピスリーのカルトンのための予備スケッチです。

1階へ行く階段を上がると、そこは、伯爵と子どもたちのプライベートな空間です。わたくしが最も心惹かれたのは、天然のコナラに彫刻が施された羽目板張り(1775年頃)の図書室。モンソー公園に面して見晴らしの良いこの図書室は、ロトンドの形をしていて、訪れる者を読書へと誘います。本棚には赤いモロッコ革で装丁した本が飾られており、なかには、伯爵が折りにつけて紐解いたに違いない、競売の目録や美術雑誌「ガゼット・デ・ボザール」などもありました。

もうひとつ面白い部屋があります。それは、伯爵の寝室と息子ニッシムの寝室に隣接する浴室です。壁は白いセラミックのタイルが張られていて、タイルには、さまざまな色のカボションカットの宝石(半球型に研磨された未カットの宝石)が交差しています。水盤、浴槽、足湯、ビデなどはエナメル加工の岩砂製で、ニッケルめっきの真鍮でできたコックはみごとな仕上がりです。さりげなく置かれた一品一品の素晴らしいこと!なんと贅沢で、そして心地よい空間なのでしょうか。


▲モンソー公園。
© A. de Montalembert

この館の主の願いによって、舞台裏までもが見事に残されたカモンド邸の素晴らしさ。そして、何より、18世紀のエレガンスを愛した伯爵の趣味をそのままに宿すこの邸宅で、あたかも伯爵たちが今ここに暮らしているかのような雰囲気を味わうことができるのが魅力です。彼の愛息の写真すらも、伯爵在りし日のままの場所に置かれているのです。

モンソー公園の散歩を楽しくするニッシム・ド・カモンド美術館。それは、20世紀初頭のパリに生きた大ブルジョワならではの豪華さ、そして洗練された趣味を理解するためには、決して見逃すことのできないミュゼなのです。

親愛をこめて。


▲モンソー通り沿いに建つ美術館。
©A. de Montalembert

▲フランス建築の伝統を感じさせる建物。
© A. de Montalembert

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