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ウジェーヌ・ブーダン美術館 backnumber
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▲ウジェーヌ・ブーダン《ノルマンディーの娘-グラース海岸》1855年
© H. BRAUNER
▲ウジェーヌ・ブーダン《ノルマンディーの娘-グラース海岸》1855年
© H. BRAUNER

お次は、この展示室の奥にあるふたつの小さな部屋へ参りましょう。ここは、ブーダンの作品のための空間です。ブーダンがパステルで空を描いた習作をご覧になってください。心のおもむくままに置かれた、色鮮やかな筆致といったら!これぞ、この画家が印象派の先駆者たる証なのです。そして、ブーダンはなんと鋭い観察眼を持っていたのでしょう。これらの習作を一枚一枚見ていくと、作品が描かれたときの風向きや日時までが分かるようではありませんか。


▲ウジェーヌ・ブーダン《トゥルーヴィルの海岸での会話》1876年
© H. BRAUNER

ほかにも「サン・シメオン農場」での日常のひとコマを捉えた、小さいながらも魅力的なパステル画が6点ありますので、お見逃しにならないでくださいね。また、《トゥルーヴィルの海岸での会話》は、板に油彩の小さな作品で、海辺を舞台にパリ上流社会が見事に描き出されています。光、そして空と雲が織り成すさまざまなヴァリエーションを、倦むことなく追い求めたことによって、ブーダンの作品は傑作となりえたのです。

アンブール=ラシェの寄贈作品を見てみることにいたしましょう。そこには、ブーダンのデッサンやデュブールの作品、彼らと同じくオンフルールに居を定めて「サン・シメオン農場」の集まりに参加したアドルフ=フェリックス・カル(1810-1881)の作品、アンドレ・アンブール(1909-1999)の鮮やかな色彩の作品も数多く含まれています。そして来たルートを戻りますと、ドリエズ(1905-1973)やジェルネズ(1888-1948)、エルボ(1878-1949)といった、オンフルールを創作の場とした画家たちの作品を展示する広い展示室もあります。


▲美術館の礼拝堂でのオープニング
© A. de Montalembert

4階では、ノルマンディーに暮らし、制作をした20世紀の画家たちの作品が展示されています。ナビ派のヴァロットン(1865-1925)が、オンフルールの眺望と教会の鐘楼を描いた《オンフルールとセーヌ湾》や、デュフィ(1877-1953)やマルケ(1875-1947)といったフォーヴィスムの画家の作品などをご覧いただけます。

お次は、礼拝堂で企画展示を観てみることにいたしましょう。ここでは「ノルマンディー印象派フェスティバル」の一環として、特別展「オンフルール、伝統と近代の狭間で(1820-1900年)」が開かれています。1820年から1900年という時代に、オンフルールとノルマンディーを描いた画家たちにオマージュを捧げるとともに、その歴史と彼らを繋いでいた交友関係を辿るという、素晴らしい内容となっています。


▲アドルフ=フェリックス・カル《オンフルール、古い中庭》
© H. BRAUNER


▲アドルフ=フェリックス・カル《サン・シメオン》1876年
© H. BRAUNER

先ほどもご紹介したアドルフ=フェリックス・カルは、あまり知られていない画家ですが、ここでは、その生誕200年を祝して、かの有名な宿を描いた《サン・シメオン》(1876)をはじめ、多くの作品が展示されていることを、書き添えておきましょう。

この展覧会をご覧になれば、近代の絵画史において、ブーダンがいかに重要な役割を果たしたか、お分かりいただけることでしょう。ブーダンは、幾世代の画家たちを繋ぐ存在であるとともに、ロマン派から印象派という、ふたつの異なる主要な芸術潮流の間の架け橋ともなりました。さらには、モネを戸外制作へと導き、自然の美しさ、そして変化する光の効果へと目を開かせたのも、ブーダンでした。こうして、ブーダンは印象派の父のひとりと称されるようになったのです。

親愛をこめて。


▲19世紀の展示室
© H. BRAUNER

▲田舎のノルマンディーの家
© A. de Montalembert

▲オンフルール、リュトゥナンス(旧総督の館)埠頭
© A. de Montalembert

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