南仏コート・ダジュールのミュゼレポート ギメ東洋美術館
  世界の宗教博物館を作りたいと望んだエミール・ギメのコレクションを元に誕生したこの美術館は、彫刻、絵画、装飾品など現在約4万5,000点もの収蔵作品を誇っています。今月はヨーロッパの中でも、コレクションが網羅しているエリア、文化、歴史ともに、最もバラエティにあふれた東洋美術の館をご紹介します。
 
東洋の美に魅せられた エミール・ギメ アジアに広がる仏教美術と 中国美術の魅力 日本の美にパリで出会う パンテオン・ブディック
エミール・ギメの情熱によって作られた美術館
▲エミール・ギメのポートレート。
 1836年生まれのエミール・ギメ(Émile Guimet)は古代エジプト、ギリシア、ローマ時代の地中海から中近東を経てアジアに至るまでの宗教博物館を作るという夢を抱いたリヨンの実業家でした。家業である化学産業で財を成した後に世界を旅して回ります。インド、中国、そして日本でもたくさんの美術品を収集したギメは、1879年にリヨンでコレクションを発表し、1889年にはそれらをパリに移して正式にギメ博物館が誕生しました。
 その後、ギメと同様の情熱を持ったコレクターが集めた作品や、フランスがアジアに派遣した考古学発掘隊の収集品を所蔵することになり、コレクションは充実していきます。
さらに古代エジプトなどのコレクションがルーヴル美術館に移管された代わりに、ルーヴルのアジア美術部門がそっくり加わり、ギメ美術館はアフガニスタンから日本に至るまで、五千年にも及ぶ歴史の中で生まれた美術品を集めた稀なる東洋美術のミュゼとなったのでした。
 
インドで生まれ、アジア各地に伝播した仏教信仰を追う
 アジアの歴史の中で生まれた信仰には多くのものがありますが、その中でも重要なものが紀元前5世紀にゴーダマ・シッタルダがインドで開いた仏教です。ギメ美術館でも仏教はアジア全般の宗教美術の中核をなす要素となっています。
 美術館の探訪はまず仏教発祥の地、インドの展示室から始めましょう。インドは仏教以外にもジャイナ教やバラモン教が派生した土地で、古代、中世美術にはそれらの融合した姿が見られます。
▲インド美術の展示室内観。正面は≪仏陀頭像≫。430〜435年・インド
▲吹き抜けのクメール文化展示室。
官能的な宗教芸術品が多いことも大きな特徴と言えるでしょう。
 その隣に広がるのがビルマ、タイ、カンボジア、ベトナムなどの東南アジアのセクションです。インドでは仏教はほとんど廃れてしまいましたが(人口の1%未満)、このエリアは現在でも多くの仏教徒が存在し、インドの影響を色濃く受けつつも静謐さを感じさせる仏像を多く生み出しました。
ギメ美術館ではカンボジアで生まれたクメール文化のコレクションが特に充実しており、本国以外では最多数を誇っています。
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東洋の美に魅せられた エミール・ギメ アジアに広がる仏教美術と 中国美術の魅力 日本の美にパリで出会う パンテオン・ブディック
   
田中久美子(Kumiko TANAKA/文)/Andreas Licht(写真)
PARIS MUSEUM PASS 利用可能施設
ギメ東洋美術館
所在地
 
6, place d'Iéna 75016 Paris
Tel
 
+33(0)1 56 52 53 00
開館時間
 
10:00-18:00
休館日
 
火曜日
入館料
 
常設展 一般:6.5ユーロ
割引:4.5ユーロ
(但し、第1日曜日は入館無料、他の日曜日は割引料金)
特別展 一般:7ユーロ 
割引:5ユーロ
(但し、毎日曜日は割引料金)
特別展と常設展を含めた見学
一般:8.5ユーロ
割引:6ユーロ
※18歳未満、身障者、ジャーナリストは無料
アクセス
 
地下鉄イエナ(léna)駅、トロカデロ( Trocadéro)駅、ボワシエール(Boissière)駅下車。
MMFで出会えるギメ東洋美術館
MMFブティックでは、ギメ東洋美術館の作品からモチーフを得た個性的なアクセサリーをお楽しみいただけます。
MMFインフォメーション・センターでは、公式ガイドブックから過去に開催された展覧会カタログなど、ギメ東洋美術館に関する書籍を閲覧いただけます。

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