海兵博物館 企画展「海洋博物館企画展「水兵がモードを創る」 ガリエラ美術館 企画展「クリノリンの帝国のもとで」
今月の特集は前回取り上げたガリエラ美術館に引き続き、
パリで行われているモードに関する展覧会のご紹介です。
パリのトロカデロにある海洋博物館では、2009年2月25日〜7月26日まで
「水兵がモードを創る」と題された企画展が行われています。
水兵の服装からインスピレーションを受けて生み出された
「マリンスタイル」のファッションに焦点を当てるという、
常設展とは異なる趣をもった目新しい内容の展覧会です。
航海の歴史にまつわるヨーロッパ随一のコレクション
▲博物館へ入るシャイヨー宮のパッシー翼入口。
© Yoko Masuda
 パリの海洋博物館は、エッフェル塔を目の前に望むシャイヨー宮のパッシー翼に人類博物館と共に入っています。シャイヨー宮は1937年に開催されたパリ万国博覧会のために建設された建物ですが、現在は劇場や複数の博物館などからなる公共の文化施設として利用されています。建物は建設の時点で万博閉会後に博物館として使用する目的があったため、ファサードは民俗をテーマにデザインされた複数のレリーフで装飾されています。

▲ルイ14世が作らせた船、レアル・ド・フランスの豪華な船尾の装飾。
Réal de France 1694年
© Yoko Masuda
 海洋博物館はサンクト・ペテルブルグの海軍中央博物館と並び世界で最も古い歴史を持つ航海に関する博物館です。コレクションにおいても、ヨーロッパの海洋関係の博物館の中で随一の古さと規模を誇っています。歴史あるコレクションはルイ15世(Louis XV)の所有していた多数の戦艦模型に始まり、航海術に使用した昔の器機類、航海や海戦を描いた多数の絵画、船首や船尾を装飾した豪華な彫刻など、学術と芸術の両面を併せ持った内容となっています。20世紀以降の歴史についても、戦艦、空母、豪華客船、最新の海洋調査船に至るまで、フランスの航海の歴史を余すところなく語ってくれる博物館です。

▲航海を描いた絵画と船の模型のコレクション。
© Yoko Masuda
 海洋博物館はパリ以外にブレスト(Brest)、ポール・ルイ(Port-Louis)、ロッシュフォール(Rochefort)、トゥーロン(Toulon)に分館を持っており、大西洋と地中海の港町にあるこれら4つの機関と連携しながら航海の歴史に関する研究を行っています。
セーラー、ボーダー、錨、青と白のコンポジション、 人々に愛され続ける水兵のシンボル
▲水兵の半袖シャツにある錨のマーク。
1945年モデル
© MNM- Arnaud Fux
▲水兵のボーダーニット。
1945年モデル(1953年頃)
©MNM - Sébastien Dondain
 今回の企画展では伝統あるフランス海軍のユニフォームが、人々のあいだに「マリンスタイル」として浸透し、オートクチュールにインスピレーションを与えるまでの過程を紹介しています。1000uの展示室には50点の水兵のユニフォーム、エンブレム、アクセサリー類、300点を超えるオブジェに資料、そして100点のオートクチュールやプレタポルテ作品など、合計500点近い展示品が公開されており、大変見応えのある内容です。
 水兵のシンボル、すなわち「マリン・スタイル」のシンボルであるセーラーカラーやボーダー模様、錨のマークなどが、いつの時代もファッションの一部として人々に親しまれるのは一体なぜでしょうか? 展覧会では服飾品、資料、映像とともに、水兵のスタイルがファッションに影響を与え続ける理由を、19世紀から20世紀の文化や時代の風潮に触れながら探ってゆきます。
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文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
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航海の歴史を語るコレクション と斬新なテーマの企画展19世紀に市民社会へと 広まった水兵のユニフォームモードとしての 「マリンスタイル」
PARIS MUSEUM PASS 利用可能施設 海洋博物館
  • 所在地
    Palais de Chaillot 17, place du Trocadéro 75116 Paris
  • Tel
    +33(0)1 53 65 69 69
  • Fax
    +33(0)1 53 65 69 65
  • URL
    http://www.musee-marine.fr
  • 開館時間
    10 :00 -18 :00
  • 入館料
    <常設展>
    一般:9ユーロ、割引料金:7ユーロ、
    6歳-18歳:5ユーロ
    <企画展>
    一般:7ユーロ、割引:5ユーロ、
    18歳以下:無料
  • アクセス
    地下鉄トロカデロ駅 (Trocadéro)より徒歩。
  • 企画展情報
    「水兵がモードを創る」
    Les marins font la mode
    2009.2.5-2009.7.26
    >>詳しくはこちら
    ※この企画展の図録は、MMFインフォメーション・センターにて閲覧いただけます。


MMFで出会える海洋博物館
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