海洋博物館 企画展「水兵がモードを創る」 ガリエラ美術館 企画展「クリノリンの帝国のもとで」
流行の発信地としてつねに世界の注目を集めるモードの都パリ。
MMFではモードに関するパリの展覧会を2回にわたって連載でご紹介します。
第1回目のテーマは1977年にパリの16区に開館した
モード専門の市立美術館、ガリエラ美術館です。
時代とともにスタイルを変え、その度に流行を生み出してきた
服飾の文化や歴史を、さまざまな視点の企画展を通して
紹介し続けている美術館です。
年に2回、その扉を開くガリエラ美術館
▲今回の企画展の入り口に飾られた白いドレスのマネキン
© Yoko Masuda
 美術館の建物であるガリエラ宮は、もともと19世紀にガリエラ公爵夫人(Duchess Galliera)が自身の美術コレクションを展示するために、またそれらを国に遺贈する目的で建てたものです。イタリア・ルネサンス様式の建築は、建築家のポール・ルネ・レオン・ジナン(Paul-René-Léon Ginain)によって設計され、1878年から1894年にかけて建設されました。
 ガリエラ美術館では常設展は行っておらず、年に2回ほど開かれる企画展でのみ、そのコレクションを観ることができます。布製の服飾品は照明の影響でたいへん傷みやすく、長期間展示するのには保存上問題があるため、定められた期間内での公開となっているのです。
▲庭園側から見た美術館のファサード。内部はエッフェル塔の設計士、ギュスターヴ・エッフェルの事務所の手による金属構造になっている
© Yoko Masuda
18世紀から現在までの3世紀にわたる服飾品のコレクションには、衣服だけでなく、帽子、靴、バッグ、扇、パラソル、またアクセサリーなどの装身具も含まれており、その数は90,000点に及んでいます。

近代化するパリで生まれた新たなモード
▲クリノリン独特のフォルムの緑色の街着 (1867年)
© Stéphane Piera / Galliera / Roger-Viollet
 現在ガリエラ美術館で行われている企画展「クリノリンの帝国のもとで〜1852-1870」では、ナポレオン3世(Napoléon III)がフランス皇帝の地位にあった、第二帝政時代の服飾文化を女性のドレスや装身具を中心に紹介しています。第二帝政期は目覚ましい産業の発達に伴い、フランスが大きな経済発展を遂げた時代です。鉄道の敷設やオスマン(Georges-Eugène Haussmann)によるパリの都市改造、パリ万博と、市民の生活は日々変化に富み、刺激の多い時代でもありました。展覧会ではこうした輝かしい進歩の時代の中で生まれた第二帝政期独特の華やかな服飾文化を、宮廷の舞踏会や当時の近代的生活、またモードの商業化などをテーマに紹介しています。
 では、展覧会のタイトルにもなっている「クリノリン」とは、なんでしょうか?それは、第二帝政期に流行したスカートを膨らませて見せるためのペチコートの名称です。もともとペチコートは、馬の毛などを使用した布素材で作られていましたが、1850年代後半になると複数の金属製の輪が連なった骨組みが使用され始めます。その輪の直径は、スカートの裾部分で約180cmにまで達し、当時の女性の間では大きなドーム状の形をしたスカートが大流行しました。1867年以降は腰にクッションを当てるなどしながら、後部に膨らみをもたせる形へと変化していきます。近代化していく社会とは裏腹に、18世紀の王室のノスタルジーを感じさせるボリュームのあるシルエットは、当時の上流階級の女性のドレスの主流となります。
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文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
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美術館の コレクションと企画展第二帝政時代と 服飾文化モードの商業化と パリのリュクス
PARIS MUSEUM PASS 利用可能施設 ガリエラ美術館
  • 所在地
    10, avenue Pierre 1er de Serbie 75016 Paris
  • Tel
    +33(0)1 56 52 86 00
  • Fax
    +33(0)1 47 23 38 37
  • アクセス
    地下鉄イエナ(Iéna)駅、またはアルマ・マルソー(Alma Marceau)駅より徒歩。
    ※ガリエラ美術館は企画展開催期間のみ開館。
  • 企画展情報
    「クリノリンの帝国のもとで〜1852-1870」 【開催期間】
    2008年11月29日-2009年4月26日
    【開館時間】
    火曜〜金曜は10 :00-18 :00、
    土曜・日曜は10 :00-19 :00
    【休館日】月曜
    【入館料】一般:8.5ユーロ、割引料金:7ユーロ、14歳-26歳: 4.20ユーロ
    ※この企画展の図録は、MMFインフォメーション・センターにて閲覧いただけます。

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