版画の街エピナル

蘇った老舗版画業者、ペルラン社伝統のアトリエ

▲「イマージュリー・デピナル」の外観
 

 2003年に開館したエピナル版画センターは、この街で最も代表的な版画業者であったペルラン社のアトリエと、そのすぐ目の前に建てられた版画美術館から成ります。民間の企業と公の博物館が一体となった、フランス国内でもほかにほとんど例を見ない珍しい形態の文化スポットです。

 18世紀末より始まるジャン=シャルル・ペルランのアトリエは、代々子孫に受け継がれながら、とりわけ19世紀の間にその事業を拡大していきました。

▲エピナル版画センターの全景
 

19世紀末にはエピナルの版画のライバル会社であったピノ(Pinot)社を買い取り、その後ドニュヴィル(Dogneville)の河川通りに新しいアトリエを構えます。1870年から1914年の間に、ペルラン社のアトリエは1,500万枚近くもの版画を国内外で販売するなど、大きな成功を収めていました。しかし20世紀に入り新しいメディアが登場すると、伝統的な情報伝達の手段であった版画は次第にその勢いを失い、1984年、ペルラン社はついに破綻に陥ってしまいます。

▲かつて使用されていた道具や機械が置かれたアトリエの内部
 

幸いその後の保存運動により、ドニュヴィルのアトリエは存続するに至り、現在は「イマージュリー・デピナル」(Imagerie d'Épinal)という名で、エピナルの伝統を守る版画のアトリエとして機能しています。

伝統的な版画印刷の技術を紹介するアトリエのガイドツアー

▲文化財に指定されている着色のための機械
 

 「イマージュリー・デピナル」は、エピナルの伝統的な版画の印刷技術を紹介するガイド付きのツアーで見学することができます。このツアーでは手作業の印刷から、大型の機械を使った印刷まで、実際にペルラン社で使用されていた道具や機械を使った版画印刷のデモンストレーションが行われます。木版や銅版、リトグラフの石版はもちろん、技術だけでなく版画印刷の歴史も垣間見ることのできるツアー内容です。

▲リトグラフの石版と印刷された版画
 

 アトリエに残る大型の着色用の機械は、歴史モニュメントにも指定されている貴重な文化財ですが、現在も実際に稼動できます。一度に9色もの色を着色できるのが特徴で、紙を機械の中でスライドさせながら淡い色から濃い色へと順に着色していくという仕組みです。往時はこの機械で1時間に数百枚もの版画が刷られていたといいます。また、機械を使った印刷とは対照的に、手作業による伝統的な着色のデモンストレーションもここで見ることができます。

▲アトリエに展示されている宗教をテーマとした木版
 

それは、金属板に穴を開けて作った版を、既にモチーフが印刷された紙にあてがい、その上からブラシで着色していくという熟練の技を要する作業です。こうして1枚1枚、手作業で印刷されたアトリエの版画作品は、併設のブティックで購入することもできます。

手作業の版画の着色では、その作業過程にラードを使用します。脂を版に塗ることで、インクのにじみを防ぐことができるという理由からです。アトリエではこうした先人の知恵が現在まで生かされています。

▲手作業での版画の着色(金属の版の調節)
 
 
Update : 2011.2.1
ページトップへ

イマージュリー・デピナル

  • 所在地
    42 bis quai de Dogneville 88000 Épinal
  • Tel
    +33(0)3 29 34 21 87
  • Fax
    +33(0)3 29 31 12 24
  • URL
    http://www.imagerie-epinal.com
  • 開館時間
    <ガイド付きツアー開催時間(約45分)>
    10:30/15:00/16:30
    <ブティック>
    9:00-12:00、
    14:00-18:30
    *日曜日・祝日は10:00-12:00、
    14:00-18:30
    *ただし7月〜8月は10:00-18:30
    (日曜日・祝日は10:00-12:00、
    14:00-18:00、月曜日は14:00-18:30)
  • 休館日
    月曜日午前、1月1日、12月25日
    その他祝日は電話で要確認
  • 入館料(ガイド付きツアー)
    一般:5ユーロ
    割引料金:3.5ユーロ
    18歳以下:1ユーロ
    6歳以下:無料
    <版画美術館との共通券>
    一般:8ユーロ
 

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。