「外交とセーヴル磁器展 ヨーロッパの歴史を動かした華麗な器たち。」

東京・五反田の『ルーヴル - DNP ミュージアムラボ』は、ルーヴル美術館と大日本印刷(DNP)がすすめる、新しい美術鑑賞のための共同プロジェクト。2006年にオープンし、昨年秋にはその第2期がスタートしました。第2期、初回のテーマは18世紀、フランス王室からの外交上の贈り物として使われた「セーヴル磁器」。工芸品ならではの鑑賞の楽しさを提案する、その展示の様子をお伝えします。

王侯貴族の手から手へ─動乱の歴史を見届けた器たち

「外交上の贈り物」となった美しき器の歴史

 『ルーヴル - DNP ミュージアムラボ』では、第一回展のジェリコーの《銃騎兵》以降、絵画や彫刻、陶器など、さまざまなジャンルの美術品を紹介してきました。素材や形状、時代など、バラエティに富んだ作品の展示を通じて、それぞれの美術品にふさわしい、多彩な鑑賞方法を提案し、最新のマルチメディア技術を駆使した斬新な美術鑑賞システムが、高い評価を得ています。

 そして今回のテーマは「セーヴル磁器」。まずは出品作品とともに、フランスが誇る名窯「セーヴル磁器」の歴史を振り返ってみましょう。

 今なお「国窯」の伝統を守り続け、「幻の陶磁器」とも謳われるセーヴルの歴史は、東洋の磁器への憧れから始まりました。中国や日本からもたらされた白い肌の磁器は、ヨーロッパで人気を博し、各国の王室は同様の磁器を生産しようと、試行錯誤を繰り返したのです。フランスがその製法にたどり着いたのは18世紀、ルイ15世の治世下でのことでした。そして、豪華な絵付けがなされたセーヴル磁器は、フランス王室から贈られる「外交上の贈り物」となり、ヨーロッパ中の憧れの的となりました。

歴史の“証人”となった名品10点を展示

 今回、ルーヴル美術館から出品されたセーヴル磁器は、他国への「贈り物」として用いられたもの(マリー=アントワネットの胸像を除く)。中でも当時のヨーロッパ情勢を雄弁に物語るのが、ルイ15世が他国への贈り物とした3枚のお皿、とりわけ「花輪飾り」の皿でしょう。

 18世紀半ばのヨーロッパでは、プロイセン(現在のドイツ)とオーストリアが対立していました。オーストリア、ハプスブルグ家の皇后マリア=テレジアは、プロイセンに対抗すべく、それまで300年にわたって敵対していたフランスと手を組むことを決めます。そして、1757年ヴェルサイユ条約が調印され、フランスとオーストリアは同盟国となったのです。

 「花輪飾り」の皿は、1758年12月2日に、ルイ15世からマリア=テレジアへ贈られた185点の食器セットに由来するものです。ルイ15世は、同盟関係を確かなものにするために、高価なセーヴル磁器を贈ったのでした。

ルイ15世から君主たちへの贈り物

▲「小さなシュロの葉」文様の皿、1758年3月にルイ15世からデンマーク王フレデリク5世に贈られた食器セットの一部
王立ヴァンセンヌ磁器製作所 1756年 軟質磁器
1918年アルベール及びポール・パニエ両氏による寄贈
OA 7197 高さ4cm、口径24.7cm
  ▲「緑のリボン」が施された「花輪飾り」の皿、1758年12月2日にルイ15世からオーストリア皇后マリア=テレジアへ贈られた食器セットの一部
王立セーヴル磁器製作所 1757年 軟質磁器
1918年アルベール及びポール・パニエ両氏による寄贈
OA 7192 高さ3.5cm、口径24cm
     
▲「モザイク」コンポート皿、1760年4月にルイ15世からプファルツ選帝侯カール=テオドールに贈られた食器セットの一部 王立セーヴル磁器製作所 1759年 軟質磁器
1881年アドルフ・ティエール夫人による遺贈
TH 1180 高さ5cm、口径22cm
 

 この他にも、ルイ15世からナポリやスペインの王妃たちへの贈り物となった磁器や、ルイ16世とマリー=アントワネットゆかりの品々など、多彩なセーヴル磁器が展示されています。「外交とセーヴル磁器展 ヨーロッパの歴史を動かした華麗な器たち。」の何よりの魅力は、フランス王室からの贈り物として、動乱の歴史の“証人”となったセーヴル磁器を、数世紀の時を経たこの日本で目の当たりにできるということ。そして、その美しさを通じて、18世紀当時のヨーロッパの歴史、さらにはその裏で輝いた職人技の魅力に触れていただける展示なのです。

ルイ15世から王妃たちへの贈り物

▲「常用」ハーフボトル・クーラー、1773年にルイ15世からナポリ王妃マリア=カロリーナに贈られた食器セットの一部(カルロッタ=ルイーザ)
王立セーヴル磁器製作所 1773年 軟質磁器
1983年マルセル・ブリュネ嬢から寄贈
OA 10879 高さ17cm、口径18cm、幅23cm
  ▲楕円波縁皿、1773年にルイ15世からアストゥリアス公妃マリア=ルイサ・デ・パルマへ贈られた食器セットの追加品として1776年3月1日に送られた品
王立セーヴル磁器製作所 1775年 硬質磁器
1984年に取得
OA 11022 高さ4cm、口径38cm×27cm
     

ルイ16世とマリー=アントワネットゆかりの品々

▲「豪華な色彩の縁飾り」文様の蓋付鉢(ポ・ア・オワル):1784年8月26日に王妃マリー=アントワネットに納品。
受け皿:1784年6月22日にルイ16世からスウェーデン王グスタヴ3世へ贈られた食器セットの追加品として同年9月7日に納品。 
王立セーヴル磁器製作所 1784年 軟質磁器 2001年に取得
鉢:OA 11979 高さ25cm、幅 28.5cm、
口径(蓋)23cm
受け皿:OA 11980 高さ5.5cm、
口径46.2cm×37.5cm
  ▲ポタージュ皿、1786年6月12日にルイ16世からロンバルディア総督、オーストリア大公フェルディナントに贈られた食器セットの一部
王立セーヴル磁器製作所 1785年 軟質磁器
旧王立リモージュ製作所から1999年寄贈
OA 11916 高さ4cm、口径24cm
     
▲「イルカの庭」の壷、1784年10月22日にルイ16世からプロイセン公ハインリヒへの贈答品
王立セーヴル磁器製作所 1781年 硬質磁器
1997年、フィリップ・ローラン、オリヴィエ・クレメール両氏による寄贈
OA 11854 高さ48cm
  ▲ルイ=シモン・ボワゾ作の彫刻をモデルとするマリー=アントワネットの胸像
アレクサンドル・クラーキン公爵の注文品
王立セーヴル磁器製作所 1782年 硬質磁器
ロバート・アブディー卿を記念して1982年に寄贈
OA 10898 高さ40cm
© 2005 Musée du Louvre / Peter Harholdt
     

 次ページでは、これらの作品を楽しむ、「ルーヴル - DNP ミュージアムラボ」ならではのユニークな鑑賞システムをご紹介します。

*作品はすべて、現在、ルーヴル美術館の工芸品部門に所蔵されているものです。
© 2010 Musée du Louvre / Martine Beck-Coppola

Update :2011.2.1
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第7回「外交とセーヴル磁器展ヨーロッパの歴史を動かした華麗な器たち。」

  • 会期
    2010年10月23日(土)〜
    2011年5月15日(日)
  • 会場
    ルーヴル - DNP ミュージアムラボ
    東京都品川区西五反田3-5-20
    DNP五反田ビル1F
  • URL
    http://museumlab.jp
  • 観覧予約
    ルーヴル - DNP ミュージアムラボは、事前予約制です。来館をご希望の方はホームページ または電話にてご予約ください。
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  • 開館時間
    金曜日:18:00-21:00
    土・日曜日:10:00-18:00
  • 休館日
    金曜日が祝日の場合、保守点検日、展示替え期間、年末年始
  • 観覧料
    無料・予約制
 

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