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コニャック=ジェイ美術館で開催された
同名の展覧会図録

『扇の黄金時代
─太陽王からマリー=
アントワネットまで─』
Le Siècle d'or de l'éventail.
De Louis XIV à Marie-Antoinette

18世紀美術の粋を楽しむ

 MMMライブラリでは、規模は小さくとも個性豊かな美術館を取り上げ、気軽に美術に関する会話を楽しむ「プチ読書会」を開催しています。今回ご紹介するのは、4月に開催の第9回読書会で取り上げるコニャック=ジェイ美術館の展覧会図録です。
 歴史ある町並みに芸術的な香りが漂うパリのマレ地区に、コニャック=ジェイ美術館はあります。この美術館のコレクションの中心は、パリの百貨店「サマリテーヌ」の創始者エルネスト・コニャックが収集した18世紀美術です。エルネストが創業した百貨店は、「何でもそろうサマリテーヌ」という有名なキャッチコピーで誰もが知ることとなりましたが、実はエルネストは、行商人から身を立てた苦労人でした。そんな彼は、かつて売り子だった妻のマリー=ルイーズ・ジェイに支えられながら、精力的に働き、事業を拡大。瞬く間に莫大な財を築き上げました。そんな夫妻は、やがて積極的に美術品を購入するようになります。エルネストは初めのうちはモネやルノワールといった同時代の印象派の画家たちの作品を中心に収集していましたが、しだいに18世紀美術に魅了されるようになりました。本書は、そんな夫妻の18世紀嗜好がよく分かる展覧会図録です。
 ルネサンス期にアジアからヨーロッパへもたらされた「扇」は、フランスではルイ14世の時代に普及し、18世紀中頃には、パリが扇制作の中心地となりました。そして職人たちによる優れた扇制作の技術はヨーロッパ各国へと伝えられ、扇は女性のおしゃれに欠かせない装身具のひとつとなっていったのです。本書には、18世紀の貴重な扇の写真はもちろん、扇とともに描かれた美しい女性たちの肖像画も収載されています。
 子どもに恵まれなかったジェイ夫妻は、膨大な財を成した後も、自分たちはつましい生活を送り、従業員らの福利構成などに心を砕いたといいます。1928年、エルネストが亡くなると、そのコレクションはパリ市に遺贈されました。そこには、すべての人と美を分かち合いたいという強い願いが込められていました。18世紀美術を愛し、社会貢献の意識も高かったジェイ夫妻。本書は、そんなふたりからわたしたちへの贈り物のような1冊です。

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Update : 2019.4.1

『扇の黄金時代 ―太陽王からマリー=アントワネットまで―』
Le Siècle d'or de l'éventail. De Louis XIV à Marie-Antoinette
24×16cm/168ページ
フランス語/2013年
著者:ジョルジーナ・ルトゥルミィ=ボルディエ他
出版社:Éditions Faton
本体価格:24ユーロ
※この情報は2019年4 月更新時のものです。

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