先月のトゥールーズ=ロートレック美術館に引き続き、今月の特集でもロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec/1864-1901)ゆかりの地をクローズアップします。アルビ郊外にある、ロートレックが幼少時代を過ごしたボスク城にロートレックのいとこの末裔にあたるマダムを訪ね、お話をうかがってきました。
トゥールーズ=ロートレック美術館のあるアルビから、のどかな田園風景を抜けて車で1時間弱の場所にあるボスク城。ロートレックが幼少時代を過ごし、そして画家となってからも幾度となく訪れたというこの城にはロートレックの思い出が随所に宿っています。
城の歴史は12世紀にまでさかのぼり、戦争や革命といった混乱の時代を経ながら、現在に至るまでロートレックの一族によって守り続けられてきました。現在もロートレックのいとこガブリエル・タピエ・ド・セレイラン(Gabriel Tapié de Céleyran/1870-1930)の末裔であるニコル・タピエ・ド・セレイラン(Nicole Tapié de Céleyran)伯爵夫人がこの城に住み、世界中からやってくるロートレック・ファンを温かく迎え入れています。
ボスク城は、小さな頃からデッサンに親しんだロートレックがその才能を開花させた場所。また画家になってからもロートレックはヴァカンスで毎年のように訪れ、家族や親類との時間を楽しんだといわれています。
古くは要塞であった石造りの重厚な城の前には、家族の所有する馬が駆けた草原が広がり、城のエントランスの脇には19世紀に建てられた小さな教会がたたずんでいます。城内には由緒ある家系ならではの貴重な装飾美術のコレクションとともに、ロートレックゆかりの品々、さらに絵画やデッサンなどが飾られており、ロートレックが過ごした当時そのままの雰囲気を味わうことができます。
ロートレックが1900年の万博で購入した日本人形が飾られている図書室、幼いロートレックが食事作法を厳しくしつけられた食堂、そしてロートレックが家族の肖像を描いたサロンと、マダムによって語られるロートレックのエピソードは尽きることがありません。寝室には実際にロートレックが使った揺りかごや人形劇のセットといった幼少時代の思い出の品々が展示されており、ロートレックのボスク城での幸せな日々に思いをはせることができます。
デッサンや写真が展示されている部屋の壁に刻まれているのは、ロートレックが家族や親戚とともに背比べをした跡。ロートレックが最後にこの壁で背丈を測ったのは1882年、18歳の年のことでした。生来の虚弱体質や13歳と14歳の時の2回にわたる脚の骨折などにより、身長が152pで止まってしまった事実をこの部屋の背比べの跡が物語っています。
そして城の中庭に面するオランジュリー(温室)のしっくいの壁には、馬やユーモアの効いたいとこのガブリエルの横顔など、ロートレックの描いたデッサンが良好な状態で保存されています。ボスク城ではこうしたロートレックのプライベートな思い出がそこかしこに溢れ、画家の素顔に出会うことができるのです。
- 所在地
Château du Bosc 12800 Camjac - Tel
+33(0)5 65 69 20 83 - FAX
+33(0)5 65 72 00 19 - 開館時間
9:00-19:00(要事前予約) - アクセス
Albiから車で約45分
- B1Fインフォメーション・センターではボスク城の関連書籍を閲覧いただけます。
- 三菱一号館美術館
ロートレックの貴重なリトグラフが揃う
三菱一号館美術館コレクション<U>
「トゥールーズ=ロートレック展」
2011年10月13日(木)〜12月25日(日)
http://mimt.jp/lautrec2011/
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