Rénovation du Musée d’Orsay 新生オルセー美術館

新しく生まれ変わったオルセー美術館が全館オープンを迎えてから約4ヵ月。前回の特集ではかつての写真や完成予想図を交えて、いち早く皆さまに新生オルセーの姿をご紹介しましたが、今回は改装工事に深く関わったおふたりの方にお話をうかがう機会をいただきました。おひとりはオルセー美術館絵画部門学芸員のザヴィエ・レイ氏、そしてもうおひと方は、その作品が印象派ギャラリーのベンチとして採用された日本人デザイナー吉岡徳仁(よしおかとくじん)氏です。新生オルセー誕生までの経緯やリニューアル後の見どころをはじめとしたトピックスが満載です。すでに新しいオルセーを訪れた方も、これからの方も必見です。

オルセー美術館学芸員インタビュー1

サヴィエ・レイ氏が語る改装工事の裏側

▲インタビューに応じてくださったオルセー美術館絵画部門学芸員のザヴィエ・レイ氏

MMF:まず今回の工事で、構造や内装の面で大きく変わった点について教えていただけますか?

ザヴィエ・レイ氏(以下X.R.氏):美術館のほぼ半分がリニューアルされたわけですが、わたしたちはまず作品の展示方法を完全に変更しました。以前は床や壁、天井にたくさんの石やベージュといった、似たような色が使用され、間接照明とともにとても明るい環境でした。ところがそれが光に満ちた雰囲気を作り出し、結果絵画の価値を引き出せない状況にしていました。そこでわたしたちは床に使われていた石材を、光を吸収する暗い色のフローリングに変え、壁にはグレー、ブルー、グリーン、紫といった単色で、どちらかというと暗い色を採用しました。そして絵画には、日中の光を再現できる最新の人工照明を与えました。

▲オルセー美術館0階中央の彫刻のギャラリー

その結果、暗い背景の中で、絵画の色彩が強調されるようになったのです。雰囲気の面でも、ジャン=ミシェル・ウィルモット氏をはじめとするすぐれた建築家たちによって、モダンな資材、モダンなカラーが使用され、非常にモダンな環境となりました。こうしてオルセー美術館のひどい混雑にも関わらず、観客と絵画の間にくつろぎの空間が作り出されたのです。

 

▲リニューアル後の5階印象派ギャラリー

MMF:展示室の壁の色はギャラリーごとに異なる複数の色を使用されていますが、それぞれの色はどういった基準で選択されたのでしょうか?

X.R.氏:壁の色については何度も試行錯誤し、最終決定までには時間がかかりました。改装工事中、美術館は全面閉館の状態ではなかったため、まず印象派のコレクションの仮のギャラリーで試し、そして最終的に作品が展示されるギャラリーに絵画を運び、そのギャラリーの一角で何回もテストを行いました。結果、印象派の展示室には、ジャン=ミシェル・ウィルモット氏によって深いグレーが提案され、館長のギ・コジュヴァル氏もそれを承諾しました。なぜならグレーは、日中の光や季節、ギャラリー内で混ざり合う自然光と人工光などに応じて変化する大変豊かな色であり、さらにギャラリー全体で一色のみを使用する点からも、どの作品にとっても申し分のないカラーであったためです。そしてほかの空間でも、飾られる作品の種類に応じて最も適切な色が選ばれました。ファン・ゴッホ(Vincent van Gogh/1853-1890)やゴー

▲0階クールベの大型作品の展示室

ギャン(Paul Gauguin/1848-1903)には鮮やかなブルー、グラフィックアートにはグリーン、そして大型のアカデミックな作品には濃い紫と、作品内に使用されている色彩のタイプに合わせた色になっています。

 

MMF:改修工事にあたって特別に困難なことはありましたか?

X.R.氏:わたしたちにとって最も困難で、大きな挑戦であったのは、来館者数がほとんど減少しない中、美術館の半分を開館させたまま工事を行ったという点でした。1年半の間オルセーの半分を閉めた状況で、300万人近い来館者を迎えたのです。工事中に仮の印象派ギャラリーを設けましたが、とても狭く、頻繁に内容を変える必要がありました。

▲ファン・ゴッホ、ゴーギャンの展示されている2階ギャラリー

MMF:今回の改装で、傑作の数々の展示場所が移動されましたが、中でも展示がより引き立つようになった作品は何でしょうか?

X.R.氏:もしひとつ例を挙げるとするなら、最も重要なのが、以前は5階の印象派ギャラリーの奥に展示されていたファン・ゴッホです。まずこの部分は論理的にも美術史の見地からもあまり明確ではありませんでした。また日本人をはじめとした来館者の多くは、もちろんオルセーの素晴らしい印象派コレクション 、ファン・ゴッホやゴーギャンなどを見にやってくるため、混雑の生じる部分でもありました。そこでわたしたちは、マネ(Édouard Manet/1832-1883)、ドガ(Edgar Degas/1834-1917)、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir/1841-1919)、モネ(Claude Monet/1840-1926)、シスレー(Alfred Sisley/1839-1899)、ピサロ(Camille Pissarro/1830-1903)などを展示する印象派のギャラリーとは別に、2階に新たにファン・ゴッホやゴーギャン、スーラ(Georges Seurat/1859-1891)、ナビ派といった印象派に続くポスト印象派のギャラリーを設けたのです。これは大きな変化といえるでしょう。なぜなら新しいオルセーでは、たいへん有名な傑作の数々をふたつのまったく異なる場所で鑑賞できるからです。来館者を振り分けることによって混雑が減り、来館者の受け入れの質が改善され、作品をより一層楽しんでいただけるようになりました。

Update : 2012.2.1
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オルセー美術館 Musée d’Orsay

  • 所在地
    62, rue de Lille 75343 Paris
  • Tel
    +33 (0)1 40 49 48 14
  • URL
    http://www.musee-orsay.fr/fr/
  • 開館時間
    9:30-18:00
    木曜日は9:30-21:45
  • 休館日
    月曜日、1/1、5/1、12/25
  • 入館料
    一般:8ユーロ
    割引料金:5.5ユーロ
    18歳以下:無料
*情報はMMFwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は美術館ホームページでご確認いただくか、MMFにご来館の上おたずねください。
 

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