ルーヴル ムラージュ工房 L'atelier du moulage du Louvre

石膏製ムラージュができるまで

型に液体状の石膏を注ぐ

▲前後のパーツに分かれたムラージュの型

 石膏のムラージュは基本的には、前後ふたつの型をドッキングさせる手法で作品の成型が行われます。作品に凹凸の入り組んだ部分がある場合は、前後の型に加え小さなパーツの型を使用することも。1作品に必要となるパーツの数の判断は技術のある職人の感覚に任せられています。

 外側に鋳型がはめられしっかりと固定されたシリコンの型の内側に、まず液体状の石膏を、刷毛を使って塗っていきます。これはムラージュの表面に気泡ができるのを避けるためと、彫刻の細部までしっかり型を取るため。刷毛で石膏を塗り終えたら、さらに手ですくいながら型の中へと均一の厚さになるように石膏を注いでいきます。

▲液体状の石膏を刷毛で型に塗る作業
▲手ですくって石膏を型に流し込んでいく

前後ふたつの型を結合

▲ムラージュの補強のために使用される麻の繊維フィラス

 石膏がある程度乾いたら、次に続くのがフィラス(filasse)と呼ばれる麻の繊維を石膏に浸したものを型の内側へと貼っていく作業です。これによって中身が空洞のムラージュの強度が増し、完成作の軽量化を図ることができます。

 続いて型の周縁に前後の型を結合させるための石膏を塗り、ドッキングとなります。前後のパーツを合体させ、締付金をいくつも使ってしっかりと型を固定します。石膏は乾く際にいくらか膨張するので、型がずれるのを防ぐためにもここは重要なポイント。ドッキング後はムラージュの底にもフィラスを貼ります。

▲石膏に浸したフィラスを型の内側にまんべんなく貼っていく
▲前後の型をドッキングさせ、締付金でしっかりと固定する様子

型を外し、仕上げ作業に

 しばらく時間を置き石膏が十分に固まったら、いよいよ型を取り外すステップです。鋳型、シリコンを順にはがすと、すべすべとした滑らかな質感が特徴の石膏像が現れました。型を取った際にできる継ぎ目の跡などは、この後ヤスリをかけ綺麗に仕上げられます。

 乾燥を終えたムラージュには、作品や注文によって顔料で色付けが行われ、ブロンズや石、テラコッタなど、さまざまな材質のニュアンスが再現されます。完成した作品は、本物に決して見劣りすることのない見事な出来栄え。200年以上の歴史を持つムラージュ工房の威信すら感じられる確かな完成度です。

▲石膏が固まり鋳型とシリコンの型が順に取り外される
▲顔料を塗って異なるニュアンスが表現されるムラージュ作品
Update : 2012.5.1 文:増田葉子(Yoko Masuda) 写真:武田正彦(Masahiko Takeda)
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