ルーヴル美術館 ムラージュ工房 L'atelier du moulage du Louvre

4月の特集で取り上げたサン・ドニのルーヴル美術館カルコグラフィー工房に続いて、今月の特集では隣接するルーヴル美術館のムラージュ工房をご紹介します。「ムラージュ(Moulage)」とはフランス語で型抜きによる成型のこと。世界各地のあらゆる時代の彫刻作品を高い技術で再現する、ルーヴルの複製彫刻の世界へとご案内します。

ムラージュはMMFブティックでもご購入いただけます

ムラージュの歴史と工房の豊かなコレクション

古代より芸術を広める役割を持ったムラージュ

 ヨーロッパにおける彫刻芸術の複製の歴史は、古代ローマの時代までさかのぼります。古代ローマではギリシア彫刻の数々がブロンズの複製によって広められ、さらにルネサンスの時代には遺跡の発掘にともない古代彫刻のコピーが頻繁に作られていました。彫刻作品を複製したムラージュは、美術教育や芸術家たちの手本のために、古くからなくてはならないものとして根付いていたのです。

 ルーヴルのムラージュ工房は、ルーヴル美術館開館から2年後の1794年に創設された由緒ある工房です。工房の創設当初は芸術の普及や教育のために美術館や美術学校を主な対象としてムラージュ作品の制作が行われていました。現在では、ルーヴルの工房で制作されるムラージュは教育現場やプロフェッショナルに限らず誰でも購入することができ、身近に楽しめるアートとして、幅広い層に親しまれる存在となっています。

▲大型作品の仕上げ作業を行う工房の職人
▲細部まで入念に行われる仕上げ作業の様子
▲ムラージュ工房の入口に展示された複製彫刻の数々

工房が誇る豊かな鋳型のコレクション

 工房ではルーヴル美術館の彫刻コレクションの鋳型だけでなく、フランス各地やフランス国外の美術館の彫刻作品の鋳型も数多く所有しており、種類は5,000点にのぼります。それらのオリジナルの彫刻作品の制作時代は先史時代から20世紀と幅広く、制作地域はヨーロッパ、アジア、アフリカと世界各地に及んでいます。中にはオリジナル作品の一部が現在欠損していたり、破壊されていたりする場合もあるため、工房が持つ鋳型のコレクションは、作品の本来の姿を再現できるという点で、貴重な資料としての価値もあるのです。

 大小あらゆるサイズのムラージュ作品が並べられた工房内は、あたかも美術館の彫刻部門のような雰囲気。複製といえども、高い技術をもって作り出されるムラージュ作品はオリジナルの彫刻作品にひけをとらない堂々とした佇まいが印象的です。本物と見間違うような優れた複製彫刻を作り出し、オリジナル作品の美しさを広めることがこのムラージュ工房の役目であることが伝わってくる光景です。

▲工房内にストックされているさまざまなムラージュ
▲工房内のあちらこちらに置かれているムラージュの鋳型

 

Update : 2012.5.1
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