ルーアン、ディエップに続く展示は、アンドレ・マルロー美術館のあるル・アーヴルで描かれた作品の数々です。ノルマンディの海沿いの都市ル・アーヴルは、印象派の呼称が生まれるきっかけとなったモネの《印象、日の出》が描かれた地としても有名です。現在マルセイユに次ぐフランス第2の港湾は、19世紀に既に多くの船舶や人々が行き交う産業の街として繁栄していました。知人のコレクターに勧められ、晩年の1903年にル・アーヴルにやってきたピサロは、蒸気船が絶え間なく往来するダイナミックな港の風景を精力的に描きます。
目の病気を抱えていたことから、ルーアン、ディエップと同様にホテルの部屋から窓の外を眺めての制作でした。彼の多くの作品が高い場所から見下ろすアングルで描かれているのはこのためです。
ピサロはル・アーヴルの港で拡張工事が行われている様子を、飽くことなくカンヴァスに収めました。港の工事の様子も、ピサロにとっては生き生きとした都市生活を感じさせる格好のモチーフだったのです。変わりゆく港の様子を描きながら、ピサロは自身の絵が当時発達した写真技術と同じように、ル・アーヴルの歴史の記録となることを楽しんでいたのかもしれません。
ピサロを鑑賞し終えた後に続くのは、ピサロの死後間もなくして起こった新しい美術の流派フォーヴィスムに焦点を当てた展示です。アンドレ・マルロー美術館に最近収蔵されたばかりのデュフィ(Raoul Dufy/1877-1953)の作品を筆頭に、マルケ(Albert Marquet/1875-1947)やフリエス(Othon Friesz/1879-1949)など、ル・アーヴルの港を描いたフォーヴィスムの画家の作品を紹介しています。新たな美のムーブメントの中に、港を俯瞰するアングルなど、ピサロの影響を垣間見ることができる興味深い展示です。
日本の皆さんにこの展覧会「港におけるピサロ〜ルーアン、ディエップ、ル・アーヴルにて」を鑑賞しに来ていただけるのを心より楽しみにしています。アンドレ・マルロー美術館は海に面したとてもモダンな建築が特徴で、一流の印象派コレクションを所蔵しています。わたしたちの展覧会、さらに素晴らしい収蔵コレクションを見に、ぜひル・アーヴルにいらしてください。
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Update:2013.7.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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