モネが大聖堂の連作を描いた地としても有名なことから、印象派ファンの巡礼地のひとつに数えられる、ノルマンディの都市ルーアン。ノルマンディ印象派フェスティバル特集の最終章となる連載第3弾は、9月30日までルーアン美術館で開催中の「まばゆい反射―印象派の傑作100点」展です。水の反射をテーマとして、印象派の作品が大々的に集められるのは、今回が初の試み。質、量ともに大変見ごたえのある、印象派ファン必見の展覧会です。
印象派の名称の由来となった、モネ(Claude Monet/1840-1926)の《印象―日の出》にも描かれたように、水の反射は印象派のムーブメントにおいて象徴的なテーマです。絶え間ない変化を見せる水面の光と色彩は、自然の姿を瞬間的にとらえて描く印象派にとって、絶好の題材でした。水面の織り成す美しい反射の世界が、時に実世界に増して印象派の画家に強い創作意欲を与えたことは、モネの描いた睡蓮のシリーズからも明らかです。
本展覧会では、モネをはじめ、ルノワール(Auguste Renoir/1841-1919)、シスレー(Alfred Sisley/1839-1899)、カイユボット(Gustave Caillebotte/1848-1894)、シニャック(Paul Signac/1863-1935)、スーラ(Georges Seurat/1859-1891)ら、水辺の風景を描いた印象派の画家たちの傑作を世界中の美術館から贅沢に集めています。移りゆく光、風やボートによる水面の振動など、印象派独特のリアリティで描かれた水の表現に注目すれば、水の反射が印象派にとって無限のテーマであったことに気づかされます。大胆かつヴァラエティに富んだ表現で水の反射を描いた印象派の画家たち。その光と色彩の哲学に改めて迫るのがこの展覧会です。
伝統的なアカデミーの絵画においても、水の反射は普遍的なテーマでした。展覧会の冒頭は水面の反射のもっとも古典的なテーマである、ナルシスを題材にした作品数点が展示されています。水面に描出されているのは、鏡のような水面に映し出された理想的な世界。その静けさに満ちた水面の反射の表現は、印象派の自由奔放な水の表現と興味深いコントラストをなしています。
本展では、モネやシスレーといった水辺の風景をとりわけ好んで描いた画家たちをクローズアップするほかに、船、橋、木々、水辺のレジャーなど、作品をテーマごとに分類して紹介しています。鉄橋や船のレジャーなど、モダンに変容する19世紀独特の風景も、本展の見どころのひとつです。
また展覧会全体を通して印象派の作品と並行して紹介されているのが、水の反射をテーマとした写真作品の数々です。19世紀に発達した写真技術は、一瞬の風景をとらえる点で印象派のコンセプトと一致し、印象派の作品にも大きな影響を与えました。主題、アングル、水の反射の様子と、両者の共通点を呼応させながら、19世紀の新しい美の概念にアプローチしていきます。
次ページでは、モネを中心とした
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Update:2013.9.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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