サロンの階下にある庭続きのフロアは、今回のリニューアルで初公開となる展示スペースです。改修工事によって余分な仕切りが取り除かれ、新しい展示室が生まれました。このフロアは、かつてルノワールが彫刻家のリシャール・ギノ、ルイ・モレルとコラボレーションを行いながら彫刻制作を行った場所。こうした事実に関連付け、この展示スペースでは彫刻作品を集めた展示を行っています。今回のリニューアルを機に、2点の絵画作品とルノワール家やギノ家からの寄託による17点の彫刻作品が新しく美術館の展示に加わりました。
ルノワールは日常的なテーマを好んで彫刻の題材にしました。展示室の中央にあるギノとのコラボレーション作品である大きな石膏像は、洗濯する女性をモチーフにしたもの。同室に飾られている《洗濯する女》(1910年頃)の絵と見比べると、ルノワールの描く女性らしい体つきやしぐさが、絵画からそのまま抜け出てきたかのような印象です。ルイ・モレルとのコラボレーション作品である踊り子をテーマにしたレリーフ作品も、ルノワールの絵画に描かれた女性から着想を得ています。彫刻の共同制作に当たってルノワールは主に指示を出し、自ら造形は行いませんでしたが、作品にはルノワールらしい優しく柔らかな女性の姿が巧みに表現されています。
印象派の画家として知られるルノワールが、彫刻作品に本格的に取り組み始めたのは、このカーニュにおいてでした。あまり知られていないルノワールの彫刻家としての一面を、彼が作品を生み出した地で発見できる、ほかにはない唯一の場所です。
この場を借りて日本の皆さんに向けてメッセージを送れることをとても嬉しく思います。なぜなら日本の皆さんがルノワールの作品をとても愛してくださっていることを知っているからです。日本人とルノワールの関係は、ルノワールの生前にまで遡ります。日本人画家の梅原龍三郎は、ルノワールに会いにこの家を訪れています。長らくルノワールと日本の間には特別な関係があるように感じます。日本人の方々にこのリニューアルされたカーニュのルノワールの家に来て、より多くの発見をしていただけることを願っています。
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Update:2013.10.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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