11月のパリは写真月間。今年も街中で写真に関するイベントが開催されました。その中でもひときわ多くの人が楽しみにしていたのが、パリの民族学専門のミュゼ、ケ・ブランリ美術館が主催する写真展「フォトケ」で、第4回目が今年の9月17日から11月17日にかけて行われました。「ケ」(quai)とはフランス語で河川通りを意味する言葉。ケ・ブランリ美術館の正面を流れるセーヌ河沿いの会場で、2年おきに開催される入場無料の現代写真の展覧会です。今月の特集では、このフォトケの模様をレポートします。
フォトケはケ・ブランリ美術館が開館した翌年の2007年から始まった写真展です。2年おきに行われるビエンナーレとして開催され、2013年は第4回目に当たります。ケ・ブランリ美術館の正面に流れるセーヌ河沿いの遊歩道に入場無料の屋外展示が設営され、昼夜問わず現代写真を気軽に鑑賞することができます。ケ・ブランリ美術館の庭園でも一部の展示が行われ、こちらも美術館開館時は入場無料で開放されます。また複数のギャラリーや美術館ともコラボレーションを行い、同時期にフォトケの一環である写真展がパリ市内の各所で行われました。
第1回目より変わることのないフォトケの基本趣旨は、フランスでほぼ無名である「西洋以外」の若手の写真家の作品を取り上げること。アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、オセアニアなど、非西洋の民族学の研究機関であり、それらの地域の膨大なコレクションを有するケ・ブランリ美術館ならではのコンセプトです。また通常は資料として扱われる民族学の写真を、芸術作品として見直すという観点もケ・ブランリ美術館がフォトケを主催するきっかけとなりました。
初回の2007年から2013年までの4回にわたるフォトケの開催で紹介された写真家は200人以上に上ります。毎回約30の国籍の異なる写真家の作品が集められ、展示数は各回300点から400点を数えます。入場無料の展覧会としては異例のボリュームで、2011年開催時には44万人近い観客を集めました。展覧会の企画進行は、各回に任命されたアート・ディレクターの指揮のもと、世界各地の非ヨーロッパのアート委員と連携し行われるのがフォトケの大きな特徴です。
その土地、地域に詳しい写真の専門家たちによって才能ある写真家が発掘され、その中からさらにフォトケ参加のための写真家の選出が行われます。この効果的なネットワークが、ヨーロッパでほぼ無名の写真家をフランスの芸術ファンと引き合わせるきっかけを作り出しています。
次ページでは、フォトケ2013のテーマと
その展示について詳しくご紹介します。>>
Update : 2013.12.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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