先月のカール・ラーション展に引き続き、パリ市立プティ・パレ美術館の企画展を取り上げます。今回は2014年4月2日から8月17日まで開催中の「1900年のパリ展」。1900年にパリ万博のために建てられたプティ・パレ美術館にとって、たいへん象徴的なテーマの企画展です。歴史的な成功を収めた1900年のパリ万博を中心に、パリの「良き時代」ベル・エポックの世界を紹介しています。
ガエル・リオ氏(以降G.R.):プティ・パレが造られたのは、グラン・パレやアレクサンドル3世橋と同様に1900年のパリ万博がきっかけです。本展はそのパリ万博だけでなく、エンターテインメントに満ちた当時のパリ全体の文化をテーマに取り上げています。1900年代のパリにおける祝祭的な雰囲気の時代が過ぎ、1914年に第一次世界大戦が勃発します。この暗い惨禍の時代の100年目の追悼記念を前に、1900年代の活気に溢れたパリの華やかなエスプリを振り返る目的でこの企画展を開催することになりました。
G.R.:1900年のパリ万博は、過去最大の会場面積を誇りました。5,000万人以上の来場者を迎え、大成功を収めたこの万博は、フランスのみならず、世界のショーケースの役割を務め、電気や地下鉄といった革新的な発明や技術が紹介されました。またパリは当時から世界中の芸術家の集まる街であったため、芸術シーンにおいても万博は大々的な発表の場となります。さらにこの万博には観覧車が設置されるなど、大衆的なフェスティバルの要素があったことも大きな成功の一因です。加えてパリの街中で演劇やキャバレーなどの催しが行われ、パリ万博にやって来る外国人たちは、万博だけでなくパリそのものに惹きつけられる結果となったのです。
G.R.:本展の展示作品は600点を数え、たいへん密度の濃い内容になっています。当時隆盛を極めたアール・ヌーヴォーの芸術家では、ガレ(Emile Gallé/1846-1904)、フーケ(Georges Fouquet/1862-1957)、ミュシャ(Alfons Mucha/1860-1939)などが挙げられます。芸術性だけでなく、技術の面でも注目できるアーティストたちです。
また万博のポスターも手掛けたロートレック(Henri de Toulouse-Lautrec/1864-1901)は、キャバレーなどのスペクタクルを描いた当時の重要なアーティストです。さらに女優のサラ・ベルナール(Sarah Bernhardt/1844-1923)、パリの地下鉄の入口をデザインしたギマール(Hector Guimard/1867-1942)、万博で初の映画上映を行ったリュミエール兄弟(Frères Lumière/1862-1954, 1864-1948)なども当時のパリを語る際に欠かせない人物です。本展ではこのように画家、ポスター作家、役者、技術者といった多様な分野で活躍した人々にオマージュを捧げています。展示作品の全体を通して1900年代のパリを感じ取っていただくことが、本展の醍醐味といえるでしょう。
次ページでは、展示の前半部分の3つの「パビリオン」から
ベル・エポック時代のパリの姿をご紹介します。>>
Update : 2014.6.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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