Dossier special - 海外の特集

  • 1.伝統と現代が融合するミラノにふさわしい「日本のかたち」展
  • 2.テーマ「庭と光」と日本の作家1
  • 3.テーマ「庭と光」と日本の作家2

ミラノサローネ2014

テーマ「庭と光」と日本の作家2

▲曽和治好《garden nano ver.6.3m》

ランドスケープデザイナーの曽和治好さんが発表したのは《garden nano ver.6.3m》と名づけたデスクトップ・ガーデンです。小さな空間でありながら大きな自然とつながる京都の坪庭をモチーフとしています。作品に使用しているのは、現在では入手が非常に難しい京都産の白川砂と青色LED。古くから水に見立てられる白川砂は、水面を想起させます。くわえて、砂の下からサウンドセンサーが内蔵された青色LEDを発光させることで、日本固有の「見立ての文化」と現代的な「日本のかたち」を重ね合わせ、手のひらサイズの庭園のなかに「水」を表現しています。水面のようにゆらめく青色LEDは周囲の音によってはじめて成り立つ一期一会の風景。音を可視化することで、静けさを意識し、木々のざわめきや鳥のさえずりに気づくことができればという思いでデザインしたとおっしゃいます。

▲玉井恵理子《野掛け》

インテリアデザイナーの玉井恵理子さんは、《野掛け》というテーブルをデザインしました。「野掛け」とは春や秋の気候が穏やかな日に自然豊かな場所に出かけて遊ぶ様や、野天での茶の湯をさす日本の古語。西洋では「ピクニック」として親しまれており、玉井さんはこのことばにヒントを得て、桐材の軽やかなテーブルをデザインしました。テーブルそのものが「野掛け」のひとときを楽しんでいるように、インテリア空間のなかで自由に、軽やかに浮遊する様を形にしています。天板にデザインされた色とりどりのモチーフが、ピクニックの陽気を想像させます。

▲デザインクラブ
《Night & Day》

インテリアデザイナーのデザインクラブの2人が発表したのは、《Night & Day》というタイトルの小さな庭。日本の庭園から色彩をなくし、「墨色」の石、水と月光だけで日本の庭園を表現しました。「墨色」は海外ではなかなか訳すことのできない日本特有の色です。細かく砕かれ、水分を含んだ墨色の石は、光のない環境では闇のなかに溶け、月光がさすとそのかすかな色あいを映しとります。今回の出展にあたって、デザインクラブの2人は日本の「もの」ではなく、「かたち」展というところに意味があると捉えています。「もの」ではなく、「もの」を通して日本の何かを伝えるということ。《Night & Day》を通して、石、水、月光という3つの要素だけで庭を構成することで、日本特有のミニマムな世界観を表現しており、非常に精神性に富む作品です。

「日本のかたち」展では、日本の文化は単なる「形」によって成り立っているわけではないことをあらためて考えさせられました。今回出展していた作家の皆さんは、「日本のかたち」の奥に潜むさまざまな「日本のすがた」を、発表した作品を通して表現していました。現代的でハイセンスな作品の奥に、日本特有の繊細な文化、洗練された伝統技術、精神世界等、いくつもの「日本のすがた」を重ね合わせている。ヨーロッパの伝統と現代が融合するミラノの街にふさわしい「日本のかたち」展でした。

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Update : 2014.6.11
文・写真 : 塚本晃子(Akiko Tsukamoto) 建築家
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ミラノサローネ 2014

会場
ロー・フィエラ、ミラノ
開催期間
2014年4月8日〜13日
開場時間
9:30〜18:30(出展者 8:30〜19:00)
アクセス
地下鉄赤線M1、Rho-Fiera(ロー・フィエラ)方面行き、終点Rho-Fiera駅下車
URL
http://www.milanosalone.com/salone/bagno/index.html
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