現代美術の企業メセナとしてアート界に貢献し続けているカルティエ現代美術財団が2014年に設立30周年を迎えました。昨年5月よりパリで行われたこれまでの軌跡を振り返る展覧会に引き続き、カルティエ現代美術財団では昨年の10月から今年の2月にかけて新たに30周年を祝う企画展を開催中です。今月の特集では、カルティエ現代美術財団の基盤をなす、建築、作品、アーティストの3つの要素に焦点を当てたふたつの展覧会「ガラス箱のためのバラード」、「住人」のレポートをお届けします。
1984年の設立以来、カルティエ現代美術財団はほかとは異なる独自のスタイルで現代美術に貢献し続けています。30年の間に100以上の企画展が開催され、約800点の作品がカルティエ現代美術財団のメセナ活動のもとに制作されました。既存の作品を紹介するのではなく、アーティストに新作の注文制作を依頼するのがカルティエ現代美術財団の大きな特徴です。作品制作にあたり制約を設けないカルティエ現代美術財団の姿勢は、クリエイターから絶大な信頼を得ています。プロジェクト内容は常に大胆かつ自由なことで知られ、カルティエ現代美術財団における画期的な展覧会は、フランスの代表的な文化機関にも影響を与えてきました。フェラーリ展を開催し、大成功を収めたのは財団の創設から間もない1987年のこと。その数年後に、パリのポンピドゥー・センターでイタリアの自動車をテーマにした企画展が行われたのも決して偶然ではないのです。
カルティエ現代美術財団は常にヒエラルキーのない中立な目線で新人から巨匠まで、クリエイターの未知の創造力を見出してきました。現代アーティストだけでなく、映画監督やファッション・デザイナー、漫画家など、あらゆる分野のクリエイターの多面的な才能を開花させたのも、カルティエ現代美術財団ならではの功績です。好奇心と創造のエネルギーに満ちたカルティエ現代美術財団のプロジェクトは、現代アート界に一石を投じるだけでなく、フランス、または世界のアートシーンを牽引する重要な役目を果たしています。
30周年を迎えるにあたり、カルティエ現代美術財団では2014年5月から2015年2月にかけて、記念の展覧会を開催しています。2014年9月まで行われていたのは「鮮明な記憶」と題された企画展。これまでのカルティエ現代美術財団とアーティストの代表的なコラボレーション作品の展示を通し、財団の30年の歴史を回顧する内容でした。
10月からは、新たなふたつの展覧会が同時開催されています。ひとつはカルティエ現代美術財団の象徴的なガラス建築をテーマにした企画展、もうひとつはカルティエ現代美術財団が30年間にわたり紡いできたアーティストや作品との出会いをコンセプトに据えた企画展です。両者ともカルティエ現代美術財団の30年の歴史を担ったアーティストらによって手掛けられた、オリジナル性の高い展覧会となっています。
次ページでは、財団の建物自体にオマージュを捧げた、
企画展「ガラス箱のためのバラード」をご紹介します。>>
Update : 2015.1.5 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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