▲ロバート・キャパ「占領されたフランスを上空から空爆した後、イギリスに帰還したが、胴体着陸して事故を起こしたため、化学物質を噴射される飛行機」
イギリス 1931年7月
International Center of Photography, New York.
©Robert Capa/International Center of Photography/Magnum Photos
第二次大戦中の1941年、ニューヨークからヨーロッパに向かう船に乗ったキャパは、「サンデー・イヴニング・ポスト(Sunday Evening Post)」紙の注文で、アメリカ海軍の大西洋横断ルポをカラーで撮ります。ドイツ軍に占領されたフランスを空爆した後、胴体着陸した飛行機に化学物質をかけて爆発を防ぐシーンには、カラーのせいか、戦争に関わる写真とはいえ、どこかのどかな雰囲気が漂っています。
社交的で人当たりがよかったキャパは、著名人にも人脈を持っていました。「ルック(Look)」誌の注文で撮ったピカソ(Pablo Picasso / 1881-1993)と伴侶のフランソワーズ・ジロー(Françoise Gilot / 1921-)、そしてその子どもたちを収めたカラー写真も、著名人を撮ったものの一つですが、注文主はカラーの出来にがっかりしました。それでも「著名なピカソが著名な写真家に撮られた」ことには満足し、1948年、白黒で撮られた写真を掲載しました。そこに掲載されたフランソワーズに日傘を差して海岸を散歩するピカソの写真は、フランソワーズがピカソとの生活を書いた本の表紙に使われたこともある、非常に有名な作品です。
▲ロバート・キャパ「海辺の女性」
フランス、ビアリッツ 1951年8月
International Center of Photography, New York.
©Robert Capa/International Center of Photography/Magnum Photos
戦争がなくなったとき、キャパが題材に選んだのはリゾート地でした。フランス・ノルマンディー地方の高級避暑地ドーヴィル、大西洋のビアリッツなど、平和が訪れてバカンスを楽しむようになった人々を撮っています。掲載したのは、旅行雑誌の先駆けとなった「ホリデイ(Holiday)」でした。
毎年スイスのスキー場で、取材で疲れた体をリフレッシュさせていたキャパは、アルプスのスキー場でスキー客を撮り始めました。キャパのカラー写真の中で一番成功していると評価の高いシリーズです。バーでカクテルグラスを手に、リラックスしたシックな女性は、都会の社交界からそのまま移動してきたような雰囲気を漂わせています。嬉しそうにスキーを担いだ女性の写真では、サングラスに青空が美しく映っています。
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Update : 2016.5.6 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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