▲エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブラン
《ゴール・ドレスを着たマリー・アントワネット》
1783年頃 ワシントン・ナショナル・ギャラリー、ティムケン・コレクション
Courtesy National Gallery of Art, Washington
1774年、ルイ16世から離宮「プチ・トリアノン」を贈られたマリー・アントワネットは、ごく親しい友人たちとこの離宮に“ひきこもる”ようになり、世間と隔絶した日々を送るようになります。その世間知らずのほどをよく表しているのが、この肖像画です。王妃が身に着けているのは、ゴール・ドレスと呼ばれたシュミーズ・ドレス。確かに当時流行していたものですが、あくまで親密な場面で身に着けるもの。公的肖像画にふさわしい衣装ではなかったため、この肖像画がサロンに出品されると、大きなスキャンダルを巻き起こしたのでした。
フランス史上、もっとも有名な詐欺事件「首飾り事件」。実際の首飾りは現存していませんが、これは残された資料をもとに正確に再現された複製品です。本物は特大のダイヤモンド約550個と100個ほどの真珠で作られたそうですが、ダイヤモンドの代わりにホワイトサファイアを用いたこの複製品からも、その並外れた豪華さは十分分かります。同じ展示室には、王妃をほのめかす風刺画もあり、結婚当初、あれほどの歓迎を受けたマリー・アントワネットが、徐々に国民の不評を買い、悲劇へと向かって着実に階段を下っていることが伝わります。
およそ200点の美術品が集う今回の展覧会で、とりわけ大きな人垣ができていたのが、マリー・アントワネットからその恋人フェルセン伯爵へ宛てた手紙(複写)の展示ケースです。差し出し日は1792年1月4日。すでに、フランス革命も幕を開け、王家の逃亡計画も失敗してしまった後のことです。手紙は、フェルセンへの狂おしい思いとともに、じつは、王妃が革命期に政治的役割を果たしていたことをも明らかにしています。
展示の後半は、フランス革命後、最初チュイルリー宮、その後はタンプル塔に幽閉されたマリー・アントワネットの日々に焦点を当てた品々が紹介されています。窓のほとんどないタンプル塔の模型を見ると、そこでの生活、とりわけ子どもたちを襲った悲劇に、胸が痛みます。展示室で最も存在感を放っているのが、この大きな絨毯です。これは、マリー・アントワネットとその義妹マダム・エリザベトが幽閉中に手掛けたもの。王妃が実際に身に着けていたシュミーズや片方の靴などの展示品とともに、悲劇の王妃の最期を、生々しく物語ります。
フランス美術ファンのみならず、歴史ファン、少女漫画ファンまで幅広い人々から注目を集める展覧会。マリー・アントワネットゆかりの品々がここまで揃うことは、なかなかありません。ぜひ、足をお運びください。
特設ショップでの注目は、ヴェルサイユ宮殿のオフィシャルグッズ。オリジナルのオルゴールやステーショナリーなど、マリー・アントワネットをモチーフにしたかわいいグッズが揃います。
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