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フォンテーヌブロー宮殿─第2帝政期の美術マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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それでは、実際に建物の内部へと参りましょう。1階の部屋は、「控えの間」にはじまり、「ギャラリーの間」から「湖の間」、最後に「中国美術室」と続きます。「控えの間」の壁には、濃い赤の壁紙が張ってあり、ほの暗い通路になっています。両側にはシャムの大使から贈られたふたつの輿があります。ひとつは国王(日傘の下に見ることのできます)のもので、もうひとつは王妃(姿を隠せるようカーテンがついています)のものです。「控えの間」と「ギャラリーの間」のちょうど真ん中には、大きな窓の前に大理石とオニキス、銀箔張りの金属でできた非常に大きな彫像《アラブの女性》(1862年)が見えます。これはシャルル・コルディエ(1827-1905)の作品で、優雅なしぐさで頭上に壺を頂いています。

「湖の間」は、噴水の中庭や池、イギリス式庭園に面した光溢れる空間。ここに集う客人らの楽しく打ち解けた雰囲気を映し出しているかのようで、ステッチ縫いが施された座り心地のよい椅子や、ゲーム用のテーブル、中国やシャムからもたらされたたくさんの品々(漆器、七宝工芸品)が置いてあります。暖炉の両側の台座には、赤い斑岩の素晴らしい壺が置かれています。深紅色の布を張った壁には、リゴー(1659-1743)の作品をもとにしたルイ15世(1725-1768)の肖像画と、トケ(1696-1772)の作品をもとにした王妃マリー・レクザンスカ(1703-1768)の肖像画が、堂々たる存在感を放っています。

左手からは、幅の広いアーケードが、皇后の素晴らしいコレクションを展示する「中国美術室」へと続いています。壁は壮麗な黒地や金箔を施した漆塗りのパネルで飾られ、窓とアーケードは、彫刻を施して彩色した木で囲まれています。天井を飾るのは、過去・現在・未来を表す3尊の仏陀を描いた中国のタピスリーと数多の蝋燭の光で輝くバルベディエンヌ(1810-1892)作のシャンデリア。これは中国の香炉の蓋をもとにつくられたものです。そして部屋の奥に鎮座するのは、真鍮に金箔を張り、トルコ石で装飾を施したチベットの仏塔です。小さな仏像を収めたこの豪華絢爛たる一品は、北京の「夏の宮殿」の寺院から略奪され、持ち込まれたものです。展示ケースも角の棚も、18世紀、19世紀の中国の品々で一杯です。大きな展示ケースの中央には、ナポレオン3世に贈られたシャム王の王冠レプリカが鎮座しています。七宝、エメラルド、ダイヤモンドで覆われた王冠のなんと見事なことでしょう。

「中国美術室」をあとに、お次は「グロ・パビヨン」1階の「ナポレオン3世の執務室」へと参りましょう。1864年につくられ、2013年に修復されたばかりのこの部屋は、とても簡素な佇まいの空間。大きな事務机と、マホガニーの美しい本棚(18世紀末)、鮮やかな青の布で覆われた肘掛け椅子のいくつかが置かれています。同じ色に張り直されたカーペットの色が、椅子の色ととてもよく合っています。隣には、皇后ウジェニーが1868年につくらせた皇后の執務室もあります。「漆の間」と呼ばれたこの部屋もまた「中国美術室」と同じ趣味、同じ豪華さ(漆塗りのパネル、絹織物、アジアや日本の品々)で飾り立てられています。展示品の多さと壊れやすさを考慮し、この部屋はガラス越しにしか見ることができません。わたくしが驚いたのは、ここには事務机がなく、いくつかの肘掛け椅子と、いくつもの小さなテーブル、座り心地のよさそうな革張りのソファーだけが置かれていることでした。

Update : 2014.12.1

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