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マントノン城マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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近年、有名な造園師ルノートルの生誕を祝って、庭園はフランス国立図書館で発見された図面をもとに素晴らしく修復されました。1万2,000株のツゲと、58のトピアリー(生け垣などをさまざまなかたちに刈り込んだもの)や、季節ごとに花を咲かせるさまざまな植物。春には忘れな草とチューリップ、バラ、夏にはツリフネソウやサルビアがマントノン夫人の好んだ白と青を考慮して植えられています。

子どものいなかったマントノン夫人は、姪がノアイユ公アドリアン・モーリス(1678-1766)と結婚する際、持参金として領地を遺贈。城はその後1983年までノアイユ家の所蔵となっていました。19世紀には、ポール・ド・ノアイユ公爵(1802-1885)が入り口側のファサードをネオ・ゴシック様式に、正面中庭側のファサードにはアーケードと豊かな装飾(怪物をかたどったガルグイユや建物上部のフリーズ彫刻)を加えました。

それでもなお、城にはマントノン侯爵夫人の魂が宿っているようです。正面中庭から、2階の小さな居室へと参りましょう。これらの部屋は19世紀にポール・ド・ノアイユ公が17世紀のエスプリに基づいて復元し、家具類をしつらえました。というのも、家具類は革命期に燃やされたり売られたりしてしまったからです。部屋の小ささには驚かされますが、これはマントノン夫人がとても寒がりだったからといわれています。控えの間は、壁にメヘレン産の革が張ってあり、大きな暖炉があります。部屋にはフランソワーズ・ドービニエとしての若かりし頃、そして、侯爵夫人になってからと、マントノン夫人の肖像画が2点飾られています。18世紀末の輿は、当時の人々がどのように宮廷に参じていたのかを思い起こさせます。17世紀の家具と祈祷室のあるマントノン夫人の寝室は、当時のコンセプトに忠実に残されています。天蓋のついたベッドが、欄干の後ろの部屋の中央に置かれています。ベッドの左手には、彼女の祖父で詩人のアグリッパ・ドービニエ(1552-1630)の肖像画があります。向かい側には、ルイ14世とモンテスパン夫人の子どもたち、メーヌ公やヴェクサン伯爵(1672-1683)とともに、養育係としてのマントノン夫人を描いたピエール・ミニャール(1612-1695)の絵画があります。銅とべっ甲のきりばめ細工の大時計だけが、マントノン夫人が実際に所有していたものです。右手にある18世紀の犬小屋は、犬の体温によって温められるベンチとして実際に使われていました。また湯たんぽとして使うこともできました。

ノアイユ公がここに住むまでは、続く部屋は侯爵夫人の客人のための部屋でした。控えの間には、グロテスク文様のフランドルの素晴らしいタピスリーが2点、絵画で装飾されたクラヴサン、マントノン夫人と姪を描いた絵画の複製、ジャコブの焼印のついた家具を見ることができます。ノアイユ公の寝室には、ノアイユ家の紋章の刺繍がほどこされた18世紀の綿織物が掛かったベッドがあります。

もう一度正面中庭を通り、塔の螺旋階段を上って19世紀にノアイユ家が暮らしていたプライヴェートな空間へと参りましょう。バルコニーからは、庭や水道橋の素晴らしい眺めをぜひお楽しみください。小さな部屋はこの眺めを堪能できるように全体が改装されていますが、窓のひとつには、ノアイユ公の祖父のものだったマイセン磁器が残されています。小さなサロンには、青の地に鳥の模様のついた18世紀中国の素晴らしい壁紙が張られており、これらの部屋は歴史的建造物に指定されています。

国王のサロンは、ルイ14世がマントノンに滞在したときに使っていた部屋です。この部屋にはフランスの歴代国王のたくさんの肖像画が飾ってありますが、その中にイアサント・リゴー(1659-1743)の描いたルイ14世の有名な肖像画(1701)の複製もあります。この絵画には王家のさまざまな紋章(剣、ユリの花、フランスとナヴァールの紋章)が描かれています。この部屋は1856年にポール・ド・ノアイユ公によって大サロンに改装されました。ノアイユ公は妻とともに教会へと続く翼を改築し、ここに第二帝政の特徴的な部屋を造らせました。大サロンの窓の両側には、モンテスパン夫人の肖像画がふたつ掛かっていますが、一方は豪華な服装をしていて、もう一方は黒の簡素な服を着ています。ビリヤード室には、ポール・ド・ノアイユ公と妻の肖像画があり、当時のままに残されています。図書室は、マントノン夫人の紋章の入った本を所蔵しています。ヴェルサイユの大回廊から着想を得た非常に大きな回廊は、ノアイユ家のためのものです。大回廊は礼拝堂まで続いています。礼拝堂には上祭服が飾ってありますが、これはルイ14世がヴェルサイユで崩御したベッドの布でつくったものです。

最後に皆さまにちょっとしたアドバイスをひとつ。夜、水道橋までライトアップされた庭を、音楽を聞きながら散策なさってみてください。水路に開ける眺めが素晴らしく、城とその庭全体が忘れられない魅力を醸し出しています。ここは、偉大な世紀の精神が宿る場所なのです。

友情を込めて。

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Update : 2015.10.1

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