フランス文化大臣アンドレ・マルロー(André Malraux)の提唱により、エクアン城に
設立された国立ルネサンス美術館は、昨年、創立30周年を迎えました。
パリから北へ約15km、イル・ド・フランスのなだらかな丘陵地を見下ろす
この優美な城は、フランス・ルネサンスの立役者とも呼ぶべき、アンヌ・ド・
モンモランシー大元帥(connétable Anne de Montmorency)が建造させた居城です。
現在の国立ルネサンス美術館のコレクションの核となるのは、19世紀前半、収集家のアレクサンドル・デュ・ソンムラール(Alexandre Du Sommerard)とその息子のエドモン(Edmond Du Sommerard)が、パリのクリュニー邸(現クリュニー中世美術館)の一部に集めた美術品のコレクションでした。デュ・ソンムラールのコレクションは主に中世の工芸品で構成されていましたが、彼がその延長として考えていた16世紀の作品の数々もそこに含まれていました。
そこへサルツマン(Salzmann)のオスマン・トルコの陶器コレクションや、ザロモン・ド・ロスチャイルド男爵夫人(Baronne Salomon de Rothschild)のルネサンスの金銀細工などの、貴重な作品群の寄贈が加わり、コレクションは増大し、次第にルネサンス時代のヨーロッパの装飾芸術の多様さを体現するものへと発展していきます。