フランス文化大臣アンドレ・マルロー(André Malraux)の提唱により、エクアン城に
設立された国立ルネサンス美術館は、昨年、創立30周年を迎えました。
パリから北へ約15km、イル・ド・フランスのなだらかな丘陵地を見下ろす
この優美な城は、フランス・ルネサンスの立役者とも呼ぶべき、アンヌ・ド・
モンモランシー大元帥(connétable Anne de Montmorency)が建造させた居城です。
1階の展示室には武器コレクションの間や、ヌエバ・エスパーニャ(現在のメキシコ)産の、大変珍しい鳥の羽根を使った装飾のキリスト教の祭壇が展示されている部屋、木彫りの間、古代の石像が並ぶローマの英雄の間が続きます。古代の芸術の価値を再び見出したのは、長い中世のキリスト教の絶対的価値観から解放されたルネサンスの時代の人々であったことは言うまでもありません。また、科学の発達を示す、時計や羅針盤のコレクションもあります。金銀細工師の工房を再現した部屋では、作品だけでなく、当時の工芸品制作の過程にも注目する美術館の姿勢がうかがえます。天井に当時の装飾フリーズ(frise、帯状の装飾)を残す、アンリ2世の王妃カトリーヌ・ド・メディシス(Catherine de Médicis)の寝室を抜けると、すばらしい琺瑯(ほうろう)加工の陶器でできたメダイヨン(médaillon)や彫刻が展示される部屋に入ります。
階段を上り2階へ行くと、そこは国王アンリ2世(Henri II)の居室です。階段の隣の大居室には、当時の城の様子を窺わせるタイル張りの床が見られます。現在はほとんど残っていませんが、当時は色とりどりのタイル装飾が床にも施されていたのです。王の寝室からプシュケのギャラリー(galerie de Psyché)、アビガイユのパヴィヨン(pavillon d'Abigaïl)まで、2階の東翼はほぼ全面的にルネサンス美術館の代表作、《ダヴィデ王とバテシバ(David et Bethsabée)》のタピスリーの展示に充てられています。これは、旧約聖書に書かれた物語を描いたタピスリーの傑作です。
最上階の3階には、アンヌ・ド・モンモランシーの図書室や、近年美術館のシンボルになっている《ダフネ(Daphné)》をはじめとする金銀細工が展示された、通称「金庫」の間があります。その隣、イタリアのマヨリカ陶器(majolique)とガラス細工、琺瑯(ほうろう)細工が所狭しと並ぶギャラリーを通り、南翼へ入ると、イタリア人画家カッソーニが15世紀に描いた絵画の連作が見られます。最後に、南翼では、当時独自の様式を確立していた、フランスのベルナール・ド・パリッシー(Bernard de Palissy)やサン・ポルシェール(Saint-Porchaire)の陶器の間や、ステンド・グラスの間、そしてフランス随一の規模を誇る、オスマン帝国時代のトルコの、イズニック陶器のコレクションを鑑賞できます。
多種多様な常設展の他に、ルネサンス美術館では常に斬新で、発見にあふれるテーマの企画展を開催しています。2008年には、ルネサンス時代の医学をテーマにした「アルス・メディキナ(Ars Medicina)」展が4月3日から7月7日まで開催される予定です。