ルイ16世、マリー=アントワネットの 最期の日々を伝える絵画や日用品
 
パリの歴史を伝える美術館 フランス革命を語るコレクション ルイ16世、マリー=アントワネットゆかりのコレクション
ルイ16世、マリー=アントワネットの 最期の日々を伝える絵画や日用品
 一方で、国王一家は悲劇の道を辿ります。革命期のコレクションの中でも、特に注目したいのは幽閉中の国王一家の生活を伝える一連の絵画や品々です。1791年、国王一家が国外逃亡を企てたヴァレンヌ事件の後、ルイ16世、王妃マリー=アントワネット、マリー=テレーズ王女、ルイ=シャルル王子、王の妹エリザベート王女は、パリのタンプル塔に幽閉されました。
▲国王一家の幽閉時の暮らしを物語る遺品。
カルナヴァレ美術館には、国王一家がそこで使っていたベッド、本棚、テーブル、椅子などが、小部屋の形に再構成されています。また、ルイ16世が使っていたナイフとフォーク、計測器、チェスの駒、王子の鉛の兵隊など、ごく身の回りの品々も見ることができます。さらにはマリー=アントワネットの遺髪を入れた指輪にペンダントヘッドまでが展示されています。特別な演出のない古典的な展示方法のため、見逃してしまいそうですが、じつはかなり貴重な品々が展示されているのです。
 
▲ルイ16世の愛用の品々も展示されている。
 
 1793年1月20日、断頭台に送られるルイ16世に家族たちが別れを告げる場面や、1793年7月3日に母親マリー=アントワネットからルイ=シャルルが引き離される場面など、国王一家を襲う出来事を伝える作品も歴史のドラマを伝える貴重なものです。後年マリー=テレーズらの証言を元にドラマチックに再構成されたこれらの絵に対し、とりわけ胸を打つのは王子ルイ=シャルルの肖像画です。
▲マリー=アントワネットの遺髪入りの指輪とペンダントヘッド。
▲まだあどけない表情を浮かべるルイ=シャルルの肖像。

この肖像画は、国民公会の命令により、実際にタンプル塔で描かれたものです。幽閉されたとき、7才だった王子は3年の後、タンプル塔にて病死しました。王子はこの時どんな思いで画家の前に立っていたのでしょうか。
 カルナヴァレ美術館にはルーヴル美術館やオルセー美術館のように画集でおなじみの名画が並んでいるわけではありません。しかし、ここでは絵画の新しい楽しみ方を発見できるでしょう。それは絵画を美術作品として愛でるだけでなく、歴史的ドキュメントとして読み、その時代を生きた人々に思いを馳せることではないでしょうか。カルナヴァレ美術館を訪れて、パリの歴史を巡れば、パリの新しい顔を発見できるかもしれません。


パリの歴史を伝える美術館 フランス革命を 語るコレクション ルイ16世、マリー=アントワネットゆかりのコレクション
文・写真:
阿部明日香 Asuka ABE
著者プロフィール:
東京大学およびパリ第一(パンテオン・ソルボンヌ)大学博士課程。
専門はフランス近代美術、特にその「受容」について研究中。
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カルナヴァレ美術館
URL
http://www.paris.fr/portail/
Culture/Portal.lut?page_id=6468
所在地
23, rue de Sévigné 75003 Paris
Tel
33(0)1 44 59 58 58
Fax
33(0)1 44 59 58 11
開館時間
10 :00-18 :00(入館は17 :30まで)
入館料
常設展/無料
企画展/一般:4.5ユーロ、割引:3.8ユーロ
アクセス
メトロ1号線サン・ポール(Saint-Paul)駅、もしくは8号線シュマン・ヴェール (Chemin vert)駅下車。

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