パリから西へ80キロほどのところにある、ノルマンディー地方の小さな町ジヴェルニーは、印象派の画家クロード・モネ (Claude Monet)が移り住み、1926年に没するまで40年以上の歳月を過ごした地として広く知られています。モネの住んだ家とその庭園は現在一般公開されており、パリから日帰りのできる観光名所として、春から秋にかけて多くの訪問者を迎え入れています。ジヴェルニーと言えばクロード・モネの代名詞のような存在ですが、この地で画業に励んだ芸術家はモネだけではありませんでした。
1883年にモネがこの地に移り住んでから、モネの画法を学ぼうと、この小さな町に多くの画家が惹きつけられることになるにはそう時間はかからなかったのです。フランスの巨匠へのオマージュとして、それらの画家たちはモネと同様のモチーフを頻繁に取り上げたのでした。とりわけ多くのアメリカ人画家たちが、モネに引き続きジヴェルニーの風景を絵画の題材として描いています。
ジヴェルニー印象派美術館が2009年の5月に開館する以前、同地にはテラ・アメリカン・アート財団 (Terra Foundation for American Art)によるジヴェルニー・アメリカン・アート美術館 (Musée d'Art Américain Giverny)が存在していました。アメリカの実業家であり、美術コレクショナーでもあるダニエル・テラ (Daniel Terra)が、現在の印象派美術館の地にアメリカン・アート美術館を開館させたのは1992年、モネがこの地に移り住んだ約1世紀後のことでした。ダニエル・テラはジヴェルニーに魅せられた画家の作品を、新たにその創作の地、ジヴェルニーに集結させることを試み、アメリカン・アート美術館を開館させることでそれを実現させます。
しかしそのテラ財団がジヴェルニーからパリに拠点を移すことになったため、美術館はジヴェルニー印象派美術館として生まれ変わり、新たに同地に開館することとなりました。新しい美術館は、オート・ノルマンディ (Haute-Normandie)地方、ルール (l’Eure)県など、ジヴェルニーを囲む複数の地方自治体による管理の下で、上述のテラ財団、そしてオルセー美術館と協力をしながら学術的にも保証された内容の企画展を行っていく予定です。
美術館では印象派の歴史、また印象派のその後にも焦点を当て、19世紀から20世紀後半にかけてそれらに関連したテーマを展覧会で取り上げていきます。ジヴェルニーはセーヌ川流域における印象派の活動の重要な行程であり、また印象派から20世紀の芸術への推移の歴史において、決定的な道しるべであると言えます。印象派の歴史を新たな観点で取り上げるとともにその現代性に焦点を当て、価値を見出していくことがこの美術館の目的でもあります。美術館の名前にある「印象派」がフランス語では<impressionnismes>と複数形で表現されていることには、印象派を一部のアーティストのものとして特定せずに、より幅広い見地で解釈するという意味が込められているのです。
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
- 所在地
99 rue Claude Monet 27620 Giverny - Tel
+33 (0) 2 32 51 94 65 - Fax
+33 (0) 2 32 51 94 67 - URL
www.mdig.fr - 開館時間
10 :00 -18 :00 - 閉館時間
11月1日〜4月30日 - 休館日
<5月1日〜7月14日>:休館日なし
<7月15日〜10月31日>:月曜日 - 入館料
一般:5 .5ユーロ
割引:3 /4ユーロ
*第一日曜日は無料。 - アクセス
パリ・サン・ラザール(Paris St-Lazard)駅より電車で45分、ヴェルノン (Vernon) 駅下車。ヴェルノン駅よりジヴェルニー(Giverny)行きのバスで20分。
- MMFwebサイトの連載「ミュゼあれこれ」では、「ジヴェルニー、モネの庭」を特集しています。記事を読む≫
- MMFインフォメーション・センターでは、「ジヴェルニー・モネの庭園、風景の創作」展の図録をご覧いただけるほか、ジヴェルニー印象派美術館のパンフレットをご用意しております。
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