

©musée d’Orsay, Dist RMN
©Hervé Lewandowski
印象派の画家のグループは1880年代を通して徐々に解体され、メンバーは以降それぞれ個々の活動を行い始めます。クロード・モネは画家として困難な時期を経たのち、1883年にジヴェルニーに移り住みますが、そこからモネの画家としてのキャリアに追い風が吹きはじめます。彼の成功は広く知られるようになり、偉大な画家の一人として当時大きな名声を得ることになるのでした。モネにとってジヴェルニーへの移住は新たな人生の始まりでもあり、彼の画風に奥深い変化が現れるきっかけでもありました。モネの画風の明白な変化は、ジヴェルニーの庭園を描くことから生まれたと言っても過言ではありません。庭園をモチーフとしたモネの作品からは徐々に客観的な要素が抜け、画面を大胆に使った抽象的な画法が取り入れられました。それらの画法は1950年代のアメリカの抽象画家にも影響を与えたと言われています。

© musée d’Orsay, Dist RMN
© Patrice Schmidt
ジヴェルニー印象派美術館の記念すべき第一回目の展覧会は、モネ自身によって創造されたジヴェルニーの庭園にテーマが捧げられています。3つのセクションからなる展示には、庭園を描いた油彩作品だけでなく、写真や手紙、当時の行政の資料もあり、ジヴェルニーの庭園が時と共に変化し、完成していく過程が紹介されています。

マルロー美術館(musée Malraux)
© Florian Kleinefenn
モネは風景画家として多くの自然を描きましたが、ジヴェルニーに移り住んでからはキャンバスの上以外にも、自然の風景を自ら「創作」することを行いました。モネの絵画に描かれた溢れんばかりの花々、豊かな緑、水面に映る錯綜するような自然の反射は、ジヴェルニーの自然と共に、モネ自身によって作り出されたものということです。入念に考え練られたこれらの風景は、手間をかけ、そしてゆっくりと、20年以上もの歳月を費やし「創作」されます。モネがジヴェルニーの庭園を精力的に描き始めるのは、移住から15年以上経った1899年以降のことですが、それまではモネが自宅の庭園を作品のモチーフとして取り上げることは稀でした。

個人蔵 一般公開されるのが初の作品
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そのため初期の庭園の様子は彼の絵画作品からではなく、当時の手紙や写真、行政の資料などから窺うことができます。
今回の企画展では20世紀に入ってから複数の写真家によって撮影されたモネの庭園の写真が30点ほど集められ展示されています。当時の庭園の様子や画家の姿がそのまま記録された大変興味深い資料です。また油彩作品の展示のなかには、かつて一度も一般公開のされたことのないモネの貴重な作品が数点含まれており、ジヴェルニー印象派美術館の第一回目の展覧会の大きな見所となっています。

著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
- 所在地
99 rue Claude Monet 27620 Giverny - Tel
+33 (0) 2 32 51 94 65 - Fax
+33 (0) 2 32 51 94 67 - URL
www.mdig.fr - 開館時間
10 :00 -18 :00 - 閉館時間
11月1日〜4月30日 - 休館日
<5月1日〜7月14日>:休館日なし
<7月15日〜10月31日>:月曜日 - 入館料
一般:5 .5ユーロ
割引:3 /4ユーロ
*第一日曜日は無料。 - アクセス
パリ・サン・ラザール(Paris St-Lazard)駅より電車で45分、ヴェルノン (Vernon) 駅下車。ヴェルノン駅よりジヴェルニー(Giverny)行きのバスで20分。
- MMFwebサイトの連載「ミュゼあれこれ」では、「ジヴェルニー、モネの庭」を特集しています。記事を読む≫

- MMFインフォメーション・センターでは、「ジヴェルニー・モネの庭園、風景の創作」展の図録をご覧いただけるほか、ジヴェルニー印象派美術館のパンフレットをご用意しております。

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